若者はなぜ5ドアなのか

若者はなぜ5ドアなのか

アヘッド トヨタ カローラスポーツ

■COROLLA SPORT 
車両本体価格¥2,106,000(G“X”、2WD、税込) 
総排気量:1,196cc
最高出力:85kW(116ps)/5,200〜5,600rpm 
最大トルク:185Nm(18.9kgm)/1,500〜4,000rpm

でも、ちょっとお待ちください。なぜ若者、というより世の中に3ドア、ないし2ドア・セダンというものが存在していたのか? ドイツのVWビートルもイタリアのフィアット500も英国のミニも、国民車として開発された小型大衆車は乗降用のドアが2枚しかなかった。その理由は2枚のほうが構造上シンプルで安価につくれ、販売価格を抑えることができたから、であろう。

では、シトロエン2CVやルノー4CVなど、同時代のフランス車のみがなぜ4ドアないし5ドアを採用していたのか? フランス人にとって自動車は徹底的に実用の道具だから、であろう。ドアは多い方が便利である。

同時に「自由・平等・博愛」を掲げる、ケチで合理的で個人主義のフランス人からすると、2ドアほど不平等で不自由なものはない。後席に乗り込むためには前席の位置を前にズラして背もたれを倒し、体をきゅーっと屈めながら入らないといけないし、降りるときには前のひとが先に外に出てシートを前にズラし、背もたれを倒して出口をつくってあげないといけない。ドアは大きく、開閉の際、まわりに気をつかう。このように不便で不合理な形態は、フランス人にとっては許しがたい、と考えたのではあるまいか。

さてそこで、わがニッポン国の現代の若者向けとされるカローラHBはなぜ3ドアを採用しなかったのか? そもそも彼らミレニアルズが自動車になぜ興味を抱かないのかといえば、運転中、「ケータイ」と呼ばれる小さなコミュニケーション・ツールを両手で持つことができないからだ。ケータイなくして、彼らは世界とコネクトできない。ということは、自分が存在しないことになってしまう。

マック、関西ではマクドの同じテーブルに座っていてもSNSを介してやりとりしているという噂の彼らである。たとえば、もしも彼、ショータが2ドア車の後席にいてトイレに行きたくなったりした場合、運転しているアスカにLINEでそのことを伝えるが、アスカは運転初心者ということもあってすぐにはケータイを確認できず、ショータは刻一刻と危険水域へと近づいていく。だけど、そのことを口頭では伝えられない。

そこで、空気を読んだ助手席のケンタがただちに「ショータがトイレ」と、 そのクルマには乗っていないけれど、アスカも速攻で返信するために見るだろうと思われるダイキにLINEし、連絡を受けたダイキ、およびショータの隣で彼の気配に気づいたミサキもすぐさまアスカに「早くパーキングに」とLINEする。アスカのケータイは、LINE、LINE、LINEと鳴りっぱなし。車内は異様なムードに包まれる。

そこでパーキングに入ったとして、ショータは助手席のケンタに降りたい旨をLINEで伝え、もう飛び出して行きたいのに飛び出すこともままならない、後席のドアがないから、どうするオレ……みたいなドラマが2ドアの車内においては展開される。お互いを慮る心やさしき現代の若者にとって、ありうべからざる状況である。

新型カローラ スポーツが5ドアで、コネクテッドであるのは当たり前だのクラッカーなんである。

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text:今尾直樹/Naoki Imao
1960年生まれ。雑誌『NAVI』『ENGINE』を経て、現在はフリーランスのエディター、自動車ジャーナリストとして活動。現在の愛車は60万円で購入した2002年式ルーテシアR.S.。

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