ディーゼル車の誘惑

アヘッド ディーゼル車

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臭くて、煩くて、振動が多い割には、車両価格が高いなど、ネガティブなイメージが先行していたディーゼル。だからこそ自動車を趣味とするような本誌読者にとって、ディーゼルエンジン搭載車はどちらかといえば最も遠い存在だろう。

text:橋本洋平 [aheadアーカイブス vol.187 2018年6月号]
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ディーゼル車の誘惑

ディーゼル車の誘惑

JAGUAR E-PACE
車両本体価格:¥4,510,000〜(税込)
エンジン:2.0リッター D180ターボチャージドクリーンディーゼル
排気量:1,999cc
最高出力:132kW(180ps)/4,000rpm
最大トルク:430Nm/1,750~2,500rpm


燃費が良い? 経済的? いやいや、そんなことはどうでもいい。ガソリンエンジンが生み出す回転フィールや官能的なサウンドのほうが大切に違いない。正直に言ってしまえば僕もそんな人間だった。だが、そんなディーゼルも変わりつつある。

そもそもガソリンエンジンよりCO2排出量が少ない傾向にあると言われるディーゼル。使われる燃料である軽油はガソリンに比べて精製温度が低いため熱効率が高い。おかげで同じ量の燃料でも燃費が良くなるというわけだ。また、燃料精製時のCO2排出量はガソリンに比べて少なく、環境のことをトータルで考えればディーゼルは大切な存在なのだ。

だが、NOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)はガソリンエンジンに対して多く、そこをどうクリアするかがポイントとなる。けれども、NOxPMも同時に減らすことはできない。トレードオフの関係にある。NOxは燃焼温度が高く、燃料が少ない時に発生しやすく、対してPMは燃焼温度が低く、燃料が多い時に発生しやすいからだ。これらは様々な考え方で後処理が行われている。
MAZDA CX-8
車両本体価格:¥3,958,200(税込、XD L Package/2WD)
エンジン:水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ
排気量:2,188cc
最高出力:140kW(190ps)/4,500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/2,000rpm


例えばクリーンディーゼルで名高いマツダの場合、ディーゼルエンジンにしてはかなりの低圧縮エンジンにするなどして、燃焼室温度を下げることでNOxの発生を抑え、発生が増したPMはDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)でキャッチすることで問題を打破している。

だが、DPFに溜まってしまうPMを処理する必要があり、そのためDPFの詰まりを検知した時には強制的に燃料を吹き、排ガス温度を高めることでPMの主成分であるススを燃やしてしまおうという制御がある。この作業は自動的に行われるのだが、ある一定の時間以上走っている必要があり、それが完了しないと次に乗った時にまたDPF再生のプログラムが発動するなど非効率な場合がある。

すなわち、近距離しか走らないユーザーにとっては向かないだろう。その証拠に、こうした使い方のユーザーのクルマはススがEGR(排気ガス循環装置)の通路を通ったPMが目詰まりを引き起こし、それが発端でトラブルを発生した事例も多い。そこでマツダは予見性リコールを発表。不具合が発生した場合は入庫すればススを洗浄するという。
Mercedes-Benz E 220 d 4MATIC All-Terrain
車両本体価格:¥8,750,000(税込)
エンジン:直列4気筒DOHCターボチャージャー
排気量:1,949cc
最高出力:143kW(194ps)/3,800rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1,600~2,800rpm

もうひとつのNOxPMの対策はメルセデスやトヨタのように尿素SCR触媒コンバーターを採用することだ。これにはアドブルーと呼ばれる尿素水溶液が必要となる。尿素を高温の排気ガスに噴霧することでNOxを窒素と水に変換する。

しかし、当然ながらクルマにはアドブルーを搭載するためのタンクが必要となり、定期的な補充が必要なところがネガティブなポイント。ただし、クルマにもよるが1~2万㎞に1回補充すれば問題はなく、数千円ほどの出費で済むからそれほど心配することはないだろう。
BMW 320d
車両本体価格:¥6,840,000(税込、Gran Turismo Luxury))
エンジン:直列4気筒DOHC BMWツインパワー・ターボ・ディーゼル
排気量:1,995cc
最高出力:140kW(190ps)/4,000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1,750~2,500rpm


このほか、BMWが採用したNOx吸蔵還元触媒というものもあるが、これはアドブルーを必要とせずメンテナンスフリーとしたところは素晴らしいが、レアメタルが必要となり、またマツダと同様に燃料を濃くして触媒をクリーン化する必要がある。燃費が悪化したり、オイルが燃料によって薄まったりするため、オイルのメンテナンスが重要のようだ。

これらのおかげでモクモクと煙をまき散らすようなクルマも減り、ずいぶん昔とは変わってきた。排ガス対策の努力の賜物だ。その分、コストが増してきたことは言うまでもないだろう。だからディーゼル車は高いとなるのは仕方がない。

MASERATI Levante
車両本体価格:¥9,867,000〜(税込、Diesel)
エンジン:60°V型6気筒
排気量:2,987cc
最高出力:202kW(275hp)/4,000rpm
最大トルク:600Nm/2,000rpm

だが最近ではジャガーのE-PACEのようにディーゼルのほうが安いという事例もある。ジャガーによれば「低速トルクの豊かさ、力強さがこのクルマの特性にマッチしており、それをより多くの方へ届けたい」との思いがあるそうだ。走りには滑らかさもあり、言われなければディーゼルとは気づきにくい。

一方で官能的なディーゼルエンジンも登場している。マセラティのレヴァンテがそれだ。マフラーの中にスピーカーを盛り込み、マセラティならではの刺激的で官能的な世界観を達成。ディーゼルならではの音色は皆無。思わず空ぶかししてしまいたくなるほどである。

そして意外な速さがあることも面白さのひとつ。低速からのピックアップはガソリン車の比ではない。グッとくる加速は、走り好きの僕には新鮮に映っている。新たな世界が感じられるディーゼル、一度は試したほうがいい。

CITROËN C4
車両本体価格:¥2,790,000(税込、Shine BlueHDi)
エンジン:ターボチャージャー付直列4気筒SOHC
排気量:1,560cc
最高出力:88kW(120ps)/3,500rpm
最大トルク:300Nm/1,750rpm
MINI COOPER SD 5DOOR
車両本体価格:¥3,940,000〜(税込)
エンジン:4気筒DOHC MINI ツインパワー・ターボ
排気量:1,995cc
最高出力:125kW(170ps)/4,000rpm
最大トルク:360Nm/1,500~2,750rpm

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text:橋本洋平/Yohei Hashimoto
自動車雑誌の編集部在籍中にヴィッツ、フォーミュラK、ロドスターパーティレースなど様々なレースを経験。独立後は、レースにも参戦する“走り系モータージャーナリスト”として活躍している。走り系のクルマはもちろん、エコカーからチューニングカー、タイヤまで執筆範囲は幅広い。「GAZOO Racing 86/BRZ Race」には、84回払いのローンで購入したトヨタ86 Racingで参戦中。
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