岡崎五朗のクルマでいきたい VOL.107 関税25%の思惑
トランプ米大統領が、通商拡大法232条に基づき乗用車の関税を現在の2.5%から25%に引き上げることを検討していると報じられた。これが実行されたら日本の自動車メーカーは大打撃だ。いや、大打撃どころか息の根が止まるだろう。
text:岡崎五朗 [aheadアーカイブス vol.187 2018年6月号]
トランプ米大統領が、通商拡大法232条に基づき乗用車の関税を現在の2.5%から25%に引き上げることを検討していると報じられた。これが実行されたら日本の自動車メーカーは大打撃だ。いや、大打撃どころか息の根が止まるだろう。
text:岡崎五朗 [aheadアーカイブス vol.187 2018年6月号]
自動車は高額な耐久消費財である一方、薄利多売のビジネスでもある。売上高利益率が10%に達したらエクセレントカンパニー。5%でもまあ悪くはない。そこに25%もの関税が課されたら勝負にならないのは火を見るより明らかだ。
もちろん、中間選挙に向けた政治的パフォーマンスという要素も多分にあるだろう。決して人気が高いとはいえないトランプ大統領にとって、自分の票田であるブルーカラー層からの支持は必要不可欠。必死になればなるほどリップサービスも大胆になる。
また、「安全保障上の脅威となる」ことが前提の通商拡大法232条が自動車に適応可能かどうかも微妙なところだ。とはいえ同法でアルミと鉄鋼で大幅な関税アップをした前例もあるから決して安心はできない。いや、トランプ大統領ならやりかねない、と思わせるところが彼一流の交渉術である。
念のために言っておくと、自由貿易が善で保護貿易が悪という二元論を振りかざすつもりはない。度を超した自由貿易主義は富の集中を招くと多くの経済学者が主張している。要は中身とバランスの問題である。その観点から自動車貿易について考えると、実質的な輸入車締め出しという極端な政策は決してアメリカ国民のためにならない。
なぜなら、輸入車を選択している約半数のユーザーから選択の自由を奪うと同時に、アメリカ車を選択する残り半分のユーザーにも便乗値上げの影響が及ぶだろうからだ。結果多くのユーザーから反発を食らったら選挙で不利になる。
ここがアルミと鉄鋼とは決定的に事情が異なる部分であり、自動車に高い関税をかけることの難しさでもある。おそらく関税引き上げをちらつかせることで、NAFTA再交渉でメキシコとカナダから譲歩を引き出すのが彼の本当の狙いだろう。実にトランプ政権らしいゲスなやり方だが、日本を含めた世界はしばらくの間、こういうことに付き合っていくしかなさそうだ。
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