EVスーパーセブン、給電の旅

EVスーパーセブン、給電の旅

アヘッド EV

その後、長らく休眠していたのだが、舘内氏が一念発起し、悪戦苦闘の末に復活。給電システムを搭載して、今度は「東北被災地、給電の旅」に出ることになった。各地の会場で電気自動車と再生可能エネルギーを活用する、クレバーな社会を実現するためのカンファレンスなどを開きつつ、各地の急速充電器を繋ぐルート区間のドライバーをクラウドファンディングで募った。

旅先の各地ではキャンプを張って、EVからの電力を使ってBBQをする、という楽しいおまけ付きの旅である。今月号のコラム(59p)でご本人もいろいろと書いておられるのでぜひご覧いただきたい。

出発に先立つ式典で私が感銘を受けたことが2つある。一つは、電気自動車からの給電について。これは2011年の震災当時、被災地に派遣された三菱自動車の社員が、被災者から掛けられた「そこに電気があるなら使えるようにして欲しい」という言葉をきっかけに社長に直訴し、車両から電気を取り出す「MiEV powor BOX」が開発されたということ。

私も震災後の比較的早い時期に石巻・女川で炊き出しのお手伝いに行き、現地の状況を目の当たりにしたが、被災者のこの言葉は切実なものであったろう。

MiEV powor BOXはi-MiEV 、ミニキャブMiEVの専用オプションであるが、式典ではニチコンの「EVパワーステーション」という製品も紹介された。これには「LEAF to Home」と「Vehicle to Home(V2H)」があり、前者は日産リーフの専用品、後者は三菱のアウトランダーPHEV、トヨタのMIRAIにも対応している。

ニチコンの担当者によると、商品自体は輸入車メーカーのEVにも対応可能であるが、クルマの側に電気を取り出すシステムが用意されていないとのことだった。「クルマから給電する」という発想自体が、未曾有の自然災害を体験した日本独自のものなのだということに改めて気付かされる。

自治体が公用車の車両入れ替え時にEVを採用する動きもあると聞いているが、個人ユーザー以上に、災害時を視野に入れて、まずは国や自治体、公共機関が積極的に公用車にEVを採用することが望ましいと思う。

そしてもう一つ、なるほど、と感銘を受けたのは舘内氏の次の言葉。

「長いこと自動車は個人の欲望の対象でした。しかしEVによって初めてクルマがソーシャルなものへと生まれ変わるのです」

「EVってゴルフカートみたいなものでしょ?」と言われていたのが冗談のように、EVは個人の欲望の対象としても十分に魅力的なクルマへと進化した。

それでもなお、正直に告白すると、私自身はまだガソリン車やディーゼル車といった多くの選択肢がある中で、EVを選ぶ積極的な理由を見つけられずにいたのだが、舘内氏のこの言葉を聞いて、少し自分の気持ちに変化が生まれていることを感じている。

アヘッド EV

▶︎5/22千年希望の丘(宮城県岩沼市)。夜はEVスーパーセブンの電力でライトアップし、被災者を鎮魂した。旅の様子は日本EVクラブ特設サイトをご覧ください。
http://evsuper7.strikingly.com

---------------------------------------------------
text:若林葉子/Yoko Wakabayashi
1971年大阪生まれ。Car&Motorcycle誌編集長。
OL、フリーランスライター・エディターを経て、2005年よりahead編集部に在籍。2017年1月より現職。2009年からモンゴルラリーに参戦、ナビとして4度、ドライバーとして2度出場し全て完走。2015年のダカールラリーではHINO TEAM SUGAWARA1号車のナビゲーターも務めた。

アヘッド ロゴ

この記事をシェアする

最新記事

     
アヘッド Car & Motorcycle Magagine ahead archives