Letter From Mom 夫と子どもとクルマたち Vol.10 ドライブの記憶

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Letter From Mom 夫と子どもとクルマたち Vol.10 ドライブの記憶

その理由はただひとつ。我が家のクルマに付いている純正ナビはどれも地図情報が古く、新しく開通した道が反映されていないので、ナビとしては役立たずになってしまったからである。もちろん、地図情報を最新のデータにアップデートすることもできる。

でも費用として1万5千円がかかり、わざわざディーラーまで行って作業が終わるまで待たなければならないと聞いた瞬間、高い!面倒! それならスマホのナビ機能でいいわ! とヘソ曲がりな私になってしまったのだった。

そんなある日、最新のカロッツェリア「サイバーナビ」を家族で試す機会に恵まれた。10年前まで、私はまさにサイバーナビユーザーだった。当時はまだ純正ナビよりも、パイオニアやケンウッド、アルパインといったブランドのナビを後付けするのがクルマ好きの王道みたいな風潮が強く、夫も昔は最新モデルに飛びついていたクチらしい。

日産セレナにサイバーナビを装着したデモカーは、純正ナビより大きな画面が専用パネルで埋め込まれ、青く光る静電式操作キーがカッコいい。2列目シートには左右ヘッドレストに1台ずつ、天井からも吊り下げ式の画面があって、私と娘は大はしゃぎ。家族3人に対して4つの画面とはまぁ、贅沢すぎる空間だ。そして見た目だけじゃなく、ナビ機能の賢さも映像の美しさも、ハイレゾ音源対応という音の良さや臨場感まで、どれもこれも我が家の純正ナビとは比べようのない素晴らしさだった。

娘は普段、長時間ドライブの時にはiPadを見せているが、広告が流れると「(スキップボタンを)押して!はやく押して〜!」と叫ぶ。私が運転していると押してやることができず、いつもご機嫌ナナメになってグズりだす。私は「あ、お外にパトカーがいるよ〜」などと言って気を逸らすのに四苦八苦している。でもこの日は自分の目の前に専用画面があり、DVDが流れ続けているから一度もグズることはなかった。これはラクだなぁと、私もしみじみ。

でもそこでふと蘇ってきたのは、私が子どもの頃のドライブ光景だ。娯楽機器といえばカセットしかなかった時代。後席に並んだ三姉妹が退屈しないように、母はしりとり、なぞなぞ、折り紙などあの手この手で私たちの気を引いた。時にはみんなで歌を合唱したり、周りを走る赤いクルマばかりを数えたり。そうした時間が楽しくて、私はドライブ好き、クルマ好きになったのではなかったか。

最新のナビは、確かに今よりずっと、ドライブを快適に効率的にしてくれるだろう。でも娘のことを想うと、もう少しこのままでもいいのかもしれない。娘が大人になったとき、ドライブ中の思い出のいちばんに、夫と私の顔を思い浮かべてもらえるように。

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。

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