街の景観を変えたヘルメット

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アライのオープンフェイスヘルメット、いわゆるジェットヘルメットのSZシリーズがデビューして今年で30年になる。その記念すべき年にSZの後継モデルとして、VZ-Ramがデビューした。

text:横田和彦 photo:長谷川徹(ヘルメット) [aheadアーカイブス vol.186 2018年5月号]
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街の景観を変えたヘルメット

街の景観を変えたヘルメット

アライが重視している〝かわす性能〟を高めるためにシールドの取り付け位置を14ミリ下げ、側頭部の滑らかな曲面の面積を増やすなど多くの改良が施されたニューモデルだ。その登場にあたりこれまでのSZの歴史について話を聞くと、意外なストーリーが隠されていた。

「ウチの社長はバイクに乗るのも大好きなんですが、街を走るライダーを見るのも好きなんです」と語り始めたのは新井章仁さん。

「30数年前、有楽町や銀座あたりを歩いているときに街を走るライダーを見て『この街の景観に合うジェットヘルメットがない』と感じてSZの開発をはじめたんです」

なんという先見の明だろう。時代はレーサーレプリカブームまっただ中。カラフルなレプリカのフルフェイスヘルメットが台頭していた時代に、街の景観に視点を置いてヘルメットを発案するとは。そうして1988年に生まれたのがスタイリッシュなフォルムのSZだ。それまでオープンフェイスヘルメットに興味を示さなかったライダーやフォロワーを生み出し、新たなバイクのスタイルとなった。

もちろんデザインだけではなく安全性や機能も最先端。ビスなどを使わず、工具なしでシールドを交換できるシステムの「アドシス」も社長がツーリング先でビスを無くした苦い思い出から生まれたものだという。ライダー目線での製品開発は社長をはじめ社員がバイク乗りで、一番のアライユーザーだからこそ実現しているのだ。

このようなヘルメットのプロテクション性能を下げずに利便性を高める機能は、これまでアライと外部の協力会社が力を合わせて開発してきた経緯がある。ところが今回のVZはちょっと流れが異なった。

「3Dプリンターなどの導入などにより社内で開発できるようになったんです」

今なら〝SZを超えるモノが作れるのでは〟という好機があったのだ。社内にそれだけの開発力を持つチームができたのは若いスタッフの存在が大きい。親からアライ製品の素晴らしさを聞いて育ったジュニアライダー世代が、さらにSZを進化させようと取り組んだ。

新井さんは「アライに憧れて入社してくるスタッフが多くなったことを嬉しく思っています」と控えめに言うが〝衝撃をかわす安全性能を徹底的に追求し、ライダーにストレスを与えないだけの快適性を備え、ライディングに集中できるようにする〟という企業としてのポリシーにこだわり続けてきた結果であろう。

そしてその高いデザイン性や安全性は海外市場でも注目されている。

「実はフランスに輸出しているヘルメットの6割はSZなんです」

アライのヘルメットが海外では、高級品として認知されていることは有名だ。他のヘルメットがダンボール積みで売られているのに、SZは鍵付きのガラスケースに展示されているほど。だがSZがフランス、特にパリの人々に深く親しまれているとは意外だった。

アパレルと同じようにショーウィンドウにディスプレイされたSZが置かれていたりするらしい。それだけSZの美しさは欧州で認められている。SZの名前が浸透しているので、新型でもSZの名前は変えないでくれという要望まであるというのだ。

考えてみるとそれまで、ネイキッドは当然として、オフロード車やクルーザー、さらにはスクーターでもサマになり、どんな服装にでもコーディネートできるヘルメットは他になかった。だからファッションに敏感な人たちから注目されるのは当然だったのだろう。

「街の景観を変えたい」その想いは世界に伝播し、日本のみならず世界中でバイクファッションに大きな影響を与えた。それを継承し、さらに安全性と快適性を進化させたのが、新たに発売されたVZ-Ramなのである。

●Arai VZ-Ram

価格:¥49,680(税込)

かわす性能をさらに高めるため新たなシールドシステム・VAS-Zを導入。シールドの取り付け位置を14㎜下げ、滑らかな曲面「R75シェイプ」の面積を増やしている。内装も一新し、頭部全体をソフトに包み込みつつホールド面積を増やしてブレを抑制。長時間かぶっていてもストレスを感じないように設計されている。ベンチレーションシステムも進化し、ツーリングに求められる整流効果を最大限に発揮するなど快適性が向上した。オプションで曇りを抑えるピンロックシステムや、眩しさを防ぐプロシェードシステムも用意されている。
www.arai.co.jp/jpn/top.html

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text:横田和彦/Kazuhiko Yokota
1968年生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターオーバーまで数多くのバイクやサイドカーを乗り継ぐ。現在はさまざまな2輪媒体で執筆するフリーライターとして活動中。大のスポーツライディング好きで、KTM390CUPなどの草レース参戦も楽しんでいる。
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