KTMのLC8cという答え〜KTM 790 DUKE

アヘッド KTM 790 DUKE

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一昨年のEICMA(ミラノショー)でKTMが発表した790 DUKEのプロトタイプには、戸惑いを含んだ驚きを覚えた。それは並列2気筒のエンジンを搭載していたからだ。

text:佐川健太郎 [aheadアーカイブス vol.185 2018年4月号]
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KTMのLC8cという答え〜KTM 790 DUKE

KTMのLC8cという答え〜KTM 790 DUKE

KTMはこれまで125/250/390 DUKEと690 DUKEまでの小中排気量は単気筒、1290SUPER DUKE Rやアドベンチャー系はV型2気筒というラインアップで構成してきた経緯があり、「何故今さらパラレルツインなの?」とやや解せない気がしたのだ。

そんな疑問を抱きつつ臨んだ海外試乗会だったが、実際に790 DUKEに乗ってみてそれは杞憂だったことが分かった。エンジンは完全新設計の水冷並列2気筒DOHC4 バルブに2軸バランサーを搭載した「LC8c」と呼ばれるユニット(小文字のcはコンパクトの意味)で、690と1290との間を埋める新たなミドルレンジのモデルということだった。
でも何故、並列2気筒なのか。KTMのエンジニアによると、基本設計が古い単気筒のLC4ではたとえ排気量を増やしても要求性能を満たすことが難しいということだった。

また、Vツインはシリンダーが前後に分かれるためマスが分散しやすく、エンジン自体も大きくなる。前輪荷重を稼ぐためにVバンクを前傾させる手もあるが、前輪と干渉しやすくキャスター角やフロントサスのストローク量にも制約が生まれるなどのネガも出てくるし、複雑な構造故に製造コストもかかる。

このクラスでKTMが狙う軽快で鋭いハンドリングを実現するためには並列2気筒がベストな選択であるという結論に至ったとのことだ。
乗ってみるとエンジンはスムーズかつ鼓動感があって、それでいて振動が少ないのは2軸バランサーのおかげだ。新開発の75度位相クランクと435度(360度+75度)の不等間隔爆発による輪郭のはっきりとしたパルス感はむしろVツインに近い感じ。中速域の弾けるトルクと10000rpm過ぎまで軽やかに吹ける上昇感に新しさを感じる。

フレームもKTM初の鋼管ダイヤモンドタイプで、エンジンを剛体の一部として利用した軽快でしなやかなハンドリングが魅力。タイトな山岳路などは得意中の得意で、ストローク感たっぷりのWP製前後サスは荒れた路面を快適にいなしてくれる。

そして、4段階のライドモードをはじめとする上級モデル並みの充実した電制システムにも助けられ、ステージを選ばず安心してスポーツライディングを楽しむことができた。KTMの目論見は見事に当たったのだ。

KTM 790DUKE スペック

ホイールベース:1,475±15㎜  乾燥重量:約169kg 
エンジン形式:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒
排気量:799cc
最高出力:77kW(105hp)/9,000rpm
最大トルク:86Nm/8,000rpm 
タンク容量:約14ℓ
価格:¥1,129,000(税込)

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text:佐川健太郎/Kentaro Sagawa 
モーターサイクルジャーナリスト。出版社、フリー編集者を経て二輪雑誌やWEBメディアに寄稿。動画サイト「MOTOCOM」主宰、「ライディン グアカデミー東京」校長を務めるなど多方面で活躍している。
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