私の永遠の1台 VOL.24 アウディ A6クワトロ2.7T

アヘッド アウディ A6クワトロ2.7T

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好きな車種について書く方が「永遠の1台」のお題にふさわしそうだが、不惑を過ぎても迷い多い人生、そうは問屋が卸してくれなかった。ふり返ってみて、クルマのことも多々書かせてもらっている割には、28年の免許歴の中で8台しか乗り継いでいなかった。13年間フランスに住んだのでフランス車が多いとは思っていたが、それでも5台。1台は英国車、2台はドイツ車だった。

text:南陽一浩 [aheadアーカイブス vol.184 2018年3月号]
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VOL.24 アウディ A6クワトロ2.7T

VOL.24 アウディ A6クワトロ2.7T

帰国して、ペーパードライバーの妻も運転する1台、そんな必要に初めて迫られ、MTのフランス車とか旧いメルセデスのクーペは問題外と通告された。雨の高速でも滑らなさそう、万が一ぶつかっても丈夫そう、そんなクルマを思案していたある日、C5世代のA6が安いことに気づいた。

いざ探すと白黒銀の内外装ばかりで気が滅入ったが、緑色ボディにベージュ内装という、何だかトッポい仕様が横浜に現れた。聞けばアストン乗りのファーストオーナーがそんな風に仕立てたセカンドカーで、神経質な人だったらしくエアコン保管のヤナセ整備モノ。「次はアウディにしようかと」、夕飯時に妻にいってみたら、目を輝かせやがった。

「Sライン」ができる直前の2003年式2.7ℓツインターボのクワトロのセダンは、アヴァントやS6、RS6といった役物に比べ、地味なところは気に入った。でも自分の身体にフランス車のそれが沁みついていることを差し引いても、乗り心地がすこぶる悪い。

初期からよく動くというのでショックをコニFSDに換えたものの、高速で突き上げが酷い。ストローク量も短いが、タイヤが太くて扁平過ぎる。エグザンティアの頃は車内でコーヒーを飲めた憶えがあるが、段差の合間を狙って啜らないと口元か膝を火傷しそうだ。

あと、車体が重くて峠の下りで憂鬱になる。これでデビュー当初、スポーティと評されたのも驚きだが、メルセデスがアジリティを掲げて以降、どれだけこの手合いがキビキビしたか、今更ながら肌で分かった。

それでも内外装色が気に入った妻の、運転リハビリには役立った。海外暮らしが長かったので親孝行の必要もあって、乗る用途はおもに帰省、第三京浜や東名を往復100~500㎞。そんなウチの世帯には雨でもスタビリティだけは抜群の、この直線番長はもってこいだった。感覚上の好悪など瑣末事で、道具として文句はいわせない。W124以降の、そんなひと昔前のドイツ的実用車イズム。好きな車種ばかり乗っていたら分からなかったことだ。

なんて自己啓発風のオチがついたところで稿を終えたい。auのCMで鬼ちゃんもいっているではないか、「学んだことは奪われない」と。もちろん、憶えていられるオツムがあればの話だが。

▶︎1968年から販売されていたアウディ100の後継モデルとして発売された。駆動方式は前輪駆動(FF)とクワトロ(4WD)。

初代がアウディ100のキャリーオーバーであったため、1997年にフルモデルチェンジされた2代目C5系が、実質的な新世代アウディLクラスの高級セダンと言って良い。エンジンからシャシー、足回りまで全てが一新され、それまでのアウディのイメージを大きく変えた。

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text:南陽一浩/Kazuhiro Nannyo
1971年生まれ。ネコ・パブリッシングを経てフリーライター歴22年。2014年までパリでクルマの他、ファッションや食に関する取材執筆、企業や美術展のコーディネイト通訳を手掛ける。3年前に帰国し、現在は東京を拠点に自動車雑誌、旅行誌やメンズ誌、仏語圏や英語圏の雑誌にも寄稿。
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