もう一度クルマにハマる

アヘッド クルマにハマる

100万円でエンスーになる

text:嶋田智之

クルマを買うのに100万円?それじゃ楽しそうなクルマとか趣味的なクルマは買えないよ……というのは、ある意味では正解だけどある意味では間違ってる。新車では軽自動車の実用系に何とか手が届くぐらいだけど、視野をユーストカーにまで広げれば、そこが宝の宝庫であることに気づくはずだ。「100万円でエンスーになれるというか、いい意味で〝通〟を気取れるクルマってピックアップできますかねぇ?」なんてリクエストに、ほとんどオチャノコのレベルでお応えできちゃうぐらい。

ただし、高望みはいけない。例えば「ランボルギーニが欲しい」「本格的なクラシックカーが欲しい」というのであれば、もうちょっと色々な意味で頑張っていただかないとならない。ここでは〝ちょうどいい頃合い〟のクルマ達を少々、寸評とともに御紹介しよう。

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●フィアット500(2007年-2015年)
小さなクルマ達の中で最も陽気で最も人々を笑顔にできるこのクルマも、気づけば楽々アンダー100万円。故障の症例も出揃いつつあるので購入前に要チェック。

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●VWゴルフ2(1983-1992年)
初代ほどマニアックじゃなく新しめより走りが軽快にして質実剛健風味。専門店には手が入って状態のいいクルマが並ぶ。日々の暮らしの中でサラッと乗りたい。

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●アルファロメオ・スパイダー 916型(1996-2006年)
乗ってるだけで「このヒト解ってるな」と思わせるのがアルファの強み。走りの気持ちよさも"日常の中の非日常"感も今はこのモデルが段トツの位置にいる。

フィアット500。コンパクトカーの中では存在そのものが最も楽しい新世代チンク。カスタマイズやドレスアップのパーツも今や豊富で、これからがもう一度楽しいタイミングだ。歴史が育んだストーリーがあるので、それを踏まえた乗り方イジリ方をするのが〝通〟っぽく演出できるコツだろう。

時代を羽織るようなちょっと古め系が気になるなら、最も安心して乗れそうなのが、VWのゴルフ2。ダメな個体はわりと淘汰されてるし、専門店も頑張ってる。スポーツ色の強いGTIより〝素〟のグレードを、ノーマルでサラッと乗るのが今風でカッコイイかも。

マニアックな色合いが強いクルマをお望みなら、第2世代のアルファロメオ・スパイダー。まず、ブランド勝ち。それにスタイリッシュ、屋根開き、快感エンジンの3拍子。ここ数年が底値のタイミングなので、手に入れるなら今、だ。2リッターのツインスパーク・エンジンが一般的にはオススメ。

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●ポルシェ・ボクスター 986型(1996-2003年)
維持を考えると慎重になるべきだが、100万円でポルシェ! はそれだけで価値。内外装に多少不具合があってもいいかな。

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●マツダ・ロードスター NC(2005-2015年)
身軽さと速さのちょうどいいバランス。NC型の強みはそこ。サラッと乗るのにもドラテクを鍛えるにも、これほど優れたパートナーは他にない。

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●メルセデス・ベンツ W124&S124(1985-1995年)
"最善か無か"。旧き佳き時代のメルセデスの最後の世代。古いモデルだがパーツにあまり困ることがなく、手をかければどんどんいいクルマへと蘇るのが凄い。

ポルシェ・ボクスターも射程距離に入ってきた。初期の2.5リッターのギュンギュン回して走るときの感覚は絶品。元が高価なクルマだし車齢的に色々出て来て然り、維持には多少の苦を伴う可能性もあるが、それでもポルシェはポルシェ。夢のポルシェ。賭けてみる価値はあるといえるだろう。

庶民の味方、永世定番のマツダ・ロードスター。今のタイミングだとNC型がターゲットか。史上最もパワフルなロードスターなので、アシさえちゃんとセットすればかなりレベルの高い走りを堪能できる。走り屋さんにも二重丸。

家族持ちだしオトナの雰囲気が欲しいという人には、メルセデスの124シリーズのセダンとワゴンがオススメ。いい時代のメルセデスの味を本当の意味で残してる最後のモデル。この時代のモデルは手をかければわりと新車に近いところまで乗り味が蘇るので、しっとりとして重厚な絶妙なる乗り味を長く楽しむこともできる。

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●ボルボC30(2007-2013年)
最も“フツー”に見られない、独特なデザインエッセンスを持つハッチバックモデル。ボルボらしい安全性と快適さはこのモデルにも健在。意外やよく走る。

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●スズキ・ジムニー(年式問わず)
日本車で最も“好きで乗ってる”感が強く、どんなライフスタイルも受け入れてくれるクルマ。小さいし実用性も高い。乗り方・遊び方も自由自在、である。

ライフスタイルにはハッチバックがマッチするけどフツーのクルマはイヤ。そういう人にはボルボC30がいい。現在のボルボほどではないけど、後ろ姿や内装などかなりデザインコンシャスで個性的。非スポーツグレードを選べば、望外なほどの〝まったり〟感と快適性。年式が新しめなのもポイント。

恐らく世界一のスーパー実用車でもある、スズキ・ジムニー。年式・タイプ関係なしにクルマ好きから一目置かれる存在感と実力はピカイチ。道を選ばないからあらゆるライフスタイルにもマッチする。本誌でもお馴染みのAPIOさんのような専門店でカスタマイズすれば楽しみも広がるし、〝通〟っぽさもかなり増す。もしかしたら日本車で最も熱い存在かも。

──とまぁランダムかつ舌足らずな紹介の仕方だけど、いずれも実は乗り手の〝好きで乗ってる〟感が最も大切。思い切り愛してあげて欲しい。そしていずれも中古車、しっかり事前研究して正しく個体選びをすることも大切。他にもあれこれいいチョイスはあるけれど、悩んだり妄想したりするところからたっぷり100万円分お楽しみいただきたい。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

世界で一番小さなモータースポーツ

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text:桂 伸一

幼少の頃に始めたモータースポーツをいまだに続けている!!…幼少? 半世紀になる。そう、初めて手にしたのは幼稚園児、選んだのはホンダS600だった。

これ、正式名称はスロットカーと言う。スロット=溝を使って走行するクルマの模型である。いまのミニ4駆世代に相通じるところがあるかも知れない。決められたコース上で、他車と競う、レースをするという意味では同じ。違うのは、スロットカーは自分がコントローラーのトリガー(レバー)を「握り」加速する。離す(戻す)と「ブレーキ」だ。

トリガーを全開で握り締めた直線から、トリガーを戻して減速して、コーナーを曲がり切れる速度に落とし、コースアウトしない限界ギリギリの速度にトリガーの握り具合を調整しながらコーナーを立ち上がる。それを操縦するのはコントローラーを握るドライバー本人だ。

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スロットカーの発祥はイギリス。鉄道模型からクルマに発展して、家庭で楽しむホームコースが人気に。それが、アメリカに飛ぶや、広大な土地柄故、1周数十メートルの専用のサーキット場を造った。〝遊びの天才〟は家庭でチマチマなどしていなかった。

同時に8台が走行可能な8レーンで隣りのクルマと競い合う。これが爆発的ブームになり、模型メーカーはこぞって走るクルマのモデルを開発。当然日本にも上陸するや、サラリーマンの会社帰りの楽しみに発展した。JRの各駅に必ず一店舗は見つけられる時代もあったほど。

1周90‌-100m級の超度級サーキットも出現したが、日本人は熱しやすく冷めやすい。その後は人気と下降を繰り返しながら、現在は、昔やっていた、やりたかったユーザー層で、もう何度目かのブームが再燃なのである。

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筆者は、その名のとおり〝モーター〟レーシングそのもののナスカーオーバルレースのバトルが楽しくてやめられない。

オーバルだからインコースは最も走行距離が短く、逆にアウトコースは長い。そのままではインコースが有利だ。だがイン側はコーナーのアールが小さい。つまり減速をアウト側よりも多く、早くしなければ曲がれない。

一方アウト側はアールが大きい故、減速もそこそこにハイスピードのまま曲がる。結果、1ヒート5分間の周回数を競うレースは、8レーン8台全てのマシンが大バトルを展開する。それも5分間延々。

相手の強いところ、弱いところを見極め、スキを突く。これぞ正にモータースポーツで、筆者は実車のレースに辿り着くまでに、このスタート時のドキドキハラハラと、レース中の駆け引きを嫌というほど味わってきた。それゆえ実車のレースにたどり着いてからもスタートは平静そのもの。駆け引きも、一歩引いて相手の弱みを探るなど、新人らしからぬ妙に冷めた目でレースを展開することができた。

おかげで上位カテゴリのレースへもステップアップできた。

オーバースピードでコースアウトしても怪我しない。雨でもレインタイヤの必要はない。仕事帰り、夜にレースが楽しめる。というワケで、一時休止もあったが、その気になれば体力の問題などなくいつでも復帰できる手軽さもいいのであーる。

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▶︎編集部でも体験させていただいて分かったことは、「入り口は簡単」ということ。まっすぐ走らせるだけでも難しいラジコンに比べると、とっかかりの早さは雲泥の差だ。溝が切られているので、ちゃんと走ってくれる。操作はトリガーを握る(アクセルを開ける)・離す(ブレーキを掛ける)、これだけ。だから、初めて走らせてもとにかく楽しい! 子どもでも大丈夫だ。

とはいえ、奥は深いのだなと思うのは、左端の写真のように、常連さんはみんな自分の工具箱を持っていて、走行の合間にマシンの調整をしたり、セッティングを変えたりしている。一人で、ドライバー、エンジニア、メカニックの三役を担うのだ。実車よりはるかにリーズナブルだけれど、レースとなれば実車と変わらず真剣勝負の白熱した闘いが繰り広げられる。

バンプロジェクトは往年のレーサーたちも集ったことのある由緒あるサーキット。メインコースは2週間ごとにサーキットとオーバルが入れ替わる。オーバルは8レーン×62m(IN)、8レーン×33m(OUT)。

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●BANPROJECT(バン・プロジェクト)
住所:神奈川県横浜市港北区新羽町412-2
Tel:045(834)7673 営業時間:14:00〜23:00
定休日:毎週月曜日(祝日の場合は次の日が代休)
www.banproject.com

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text:桂 伸一/Shinichi Katsura
1959年生まれ。自動車雑誌「OPTION」を経てフリーランス・モータージャーナリストに。クルマの印象を判りやすく各媒体に寄稿すると同時に、幼少の頃より憧れたレーシングドライバーとしても活躍。アストンマーティンとは2008年から5回ニュル24時間にワークスドライバーとして参戦。2度の優勝を飾る。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。WCAワールドカーアワード選考委員。

そうだ!EVに乗ろう

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text:今尾直樹

いまやEV化は滝に向かって流れる川のようなものであって、不可逆である。趣味として、川の流れにあらがうことはできよう。たとえば、ガソリン自動車に乗り続けることで。

では、EVを趣味として積極的に川を泳ぐことはできるのだろうか? 流れに乗るだけに超人的な記録が出るかもしれない。滝つぼの先になにが待ち受けているのか、ワクワクするではないか。

筆者が初めて公道で乗った本格的EVはテスラ・ロードスターである。ロータスがシャシーの開発を請け負った、エリーゼの兄弟のようなそのエレクトリック・スポーツカーは痛快にして爽快な乗り物だった。

加速も減速もアクセル・ペダルひとつ。アクセルを踏み込むと、ヒュイ〜ンというSF映画もかくやの高周波音が轟き、その澄んだ音色以外は経験したことのない静かさでもって、厳密にいえば、ハイブリッドのプリウスはすでに跋扈していたからEVモード走行は体験していたけれど、エンジン音も排気音もなしで、1.8ℓスーパーチャージャーのエキシージ並みの加速を実現していたのだからたまげた。

すべてのEVがゴルフ・カートみたいである必要はない。EVのスポーツカーがあってもいいじゃないか。

というテスラの創業者イーロン・マスクの言葉に目からウロコ、筆者はガンと衝撃を受けた。答をいわれてみれば、なあんだ、だけれど、当時は考えたこともなかった。まさにコロンブスのタマゴである。

テスラ・ロードスターの発売は2008年で、筆者が取材に行ったのはその2年ほどのちのことだけれど、カリフォルニア市民の環境意識はすでにそうとう高かった。公共施設の夜間照明をソーラー・バッテリーでまかなうシステムがあったし、ZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)の青空見本市みたいなイベントがあったりした。

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ZEVの見本市には全米各地のベンチャーが開発した、もしくは開発中の、渋滞をすり抜ける幅の狭い4輪車だとか、へんてこりんなEVが多数出ていた。飛行機みたいなカタチのもあった。あのEVたちがその後どうなったのか、寡聞にして知らないけれど、そういうものを調べて、まずは個人の楽しみとして輸入してみたりしたらハマったり、新たなビジネスにつながったりするかもしれない(いうまでもなく無責任な提案です)。

初代日産リーフのオーナーを取材したことがある。リーフは2010年登場だけれど、取材時、すでに3・11は起きていたと記憶する。年金生活を送り始めたばかりのオーナーは住宅街にある大きな一軒家の屋根にソーラーパネルをつけ、自然エネルギーでリーフを走らせる計画だった。

リーフの充電器を待っているところで、実現すれば、環境負荷ゼロ。3・11直後にあったような、給油のための行列に並ぶ必要もない。ソーラーパネルの費用は数百万円かかったけれど、確か補助金が出るし、すでに電気料金の支払いはガクンと減ったということだった。

年金生活者にとって日々の支出が減るのはありがたい。退職金をタンス貯金するのでは意味がない。若者たちのお世話になるというのに、年寄りが消費をしないでどうする。消費すれば、景気もよくなる。未来に対する消費は社会貢献にもなる、と元デパート勤務のオーナーは熱弁をふるった。

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EV嫌いのガソリン・ヘッドの方に思い出してほしい。筆者が子どもの頃、またがって乗ることができる幼年向けの電動のおもちゃがあった。いまでも似たようなのがあると思う。

小学校のとき、友だちがもっていて、筆者は彼の家に遊びに行くと、幼稚園児用のその電動車で部屋のなかをぐるぐる回るのが好きだった。ごく低い速度ながら、三輪車や自転車では得られない開放感と快感があった。デパートの屋上のEVもまたしかり。

2017年7月、フランス、イギリス政府が2040年以降のガソリン自動車の販売を禁止すると発表、インドはそれより早くて30年からEVとHV(ハイブリッド)のみ、中国もEVに向けて舵を切った。

これらの急激な変化を受けて、トヨタとパナソニックは車積載用バッテリー事業の新たな協業を検討していることを発表した。全個体電池という耳慣れないモノをトヨタが開発中であることも公になっている。

EVは自動運転と不可分であるとも考えられている。ロボット・カーが登場したからといって、運転の喜びが消えてしまうわけではない。安心してください。自動運転システムをオフにすればよいのだから。EVに乗るということは未来をポジティブにとらえるということだ。

「ふとんのなかで寝ているだけでは、楽しいことはなにも始まらない」。唐突ながら、所ジョージさんのこの言葉をふと思い出した。朝、目が覚めたら、あ、今日も生きている、と感謝せよ。死んでたかもしれないんだからね。

近頃、自動車がつまらないとお嘆きの読者諸兄がもしいらっしゃるとしたら、ともかく、ふとんのなかで感謝の言葉を唱えてみられてはいかがだろう。

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text:今尾直樹/Naoki Imao
1960年生まれ。雑誌『NAVI』『ENGINE』を経て、現在はフリーランスのエディター、自動車ジャーナリストとして活動。現在の愛車は60万円で購入した2002年式ルーテシアR.S.。

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