Letter From Mom 夫と子どもとクルマたち Vol.8 腰痛デビュー

アヘッド Letter From Mom

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いっそのことマッサージ師の資格でも取ろうかしらと思うほど、毎夜のごとく夫から「ちょっと腰押して」と頼まれる。夫は20代でギックリ腰をやり、すでに20年も腰痛を抱えている自称「ガラスの腰」の持ち主だ。ヒマさえあれば整骨院へ通っているが、それでも腰が痛い、腰が痛いといつも言っている。

text:まるも亜希子 [aheadアーカイブス vol.180 2017年11月号]
Chapter
Vol.8 腰痛デビュー

Vol.8 腰痛デビュー

そんな夫の辛さが理解できない私は、腰痛にいいという寝具やストレッチの本を揃えたり、家事育児の手伝いを頼むのも、夫の腰の状態次第。腰痛持ちと暮らすのは、なかなかに気をつかうものである。

そしてクルマ選びでも、決まってシートの評価が食い違う。夫は私よりはるかに運転が上手く、クルマの本質を見抜く力に長けているので、その評価を信頼はしている。

とくに走りに関しては、私の技術が及ばない領域の評価に、なるほどと感心させられるのだが、シートだけは私がいいと思うものをなぜ夫がダメだと言うのかがわからない。やっぱり腰痛持ちの気持ちは理解できないわ、なんてあきらめていたのだった。

ところが、娘の体重が10kgを超えてきたころから、私の腰にも異変が起こりはじめた。長い時間抱っこをした日に腰がジンジンしたり、床に散らばったオモチャを片付けようと腰を曲げると張るような違和感があったり。もしかして、これが腰痛というもの? いやいや、そんなわけない、ちょっと疲れが溜まっただけ。

そう自分をごまかしていたある日、右手に重い旅行カバンを持ち、左手に娘を抱っこして階段を5階まで上がったのが運の尽き。翌朝、私は布団から起き上がれないほどの激痛に襲われ、めでたく腰痛デビューしてしまった。

このときほど夫を頼もしく思ったことはない。さすがは腰痛歴20年、言われるがままにしているだけで、数日後には歩けるまでに回復した。ようやくクルマに乗れるようになって、まず驚いたのは乗り降りの大変さ。今まで何も考えずにホイホイ乗り降りしていた愛車なのに、ヨッコラショと手で身体を支えながら、ゆっくり腰を沈めていかないと座れないのである。

走り出してからも、クッションからゴツゴツと振動が伝わって腰を刺激し、カーブでは身体が安定せずヘンな力が入ってしまい、ズキズキとした痛みを誘発する。そういえば私の愛車のシートも、夫はダメだと言っていたなぁと思い出した。

こうして私は腰痛という代償を払って、乗り降りのしやすさや乗り心地の良さをチェックするときに、腰への負担という新しい視点を手にいれた。あらためて試乗してみると、いま人気のクロスオーバーSUVやハイトワゴンタイプの軽は乗り降りしやすいが、シートの良さまでを含めると、手ごろな価格帯ではいま一歩のモデルが多い。

チョイ乗りでは快適でも、長距離や高速走行では疲労感が増す印象だ。そんななかシートの良さで夫とも意見が一致したのが、C-HRや新型N-BOXだった。子育て世代は普段から腰への負担が重くのしかかる時期。同じ悩みを持つ人たちへ、少しでも腰をいたわってくれるクルマをこれからも発掘していきたい。

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。
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