なぜ今、スポーツカーブランドなのか 〜トヨタ「GR」シリーズ

アヘッド トヨタ「GR」シリーズ

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去る9月19日、日本で一番新しいスポーツカーブランドがトヨタから発表された。それが「GR」だ。

text:今井優杏 [aheadアーカイブス vol.180 2017年11月号]
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なぜ今、スポーツカーブランドなのか 〜トヨタ「GR」シリーズ

なぜ今、スポーツカーブランドなのか 〜トヨタ「GR」シリーズ

そう、同社のモータースポーツ活動「GAZOO Racing」の頭文字を取った名を冠した市販車が、いよいよ発売となった。

頂点にはWRCに参戦するヴィッツ(欧州名はヤリス)直系のオーバー200馬力(!)、スーパーチャージャー付きエンジンを搭載したフルチューン・コンプリートモデル「GRMNヴィッツ」を据え、以下、足回りと駆動系に手を加えた「GR」、さらにより市販車に近いモデルとなる「GR SPORT」という体系を敷く。すべて併せて今年中に全9車種、11車系のシリーズを投入する。

しかし、欧州メーカーが軒並み白々しいまでに電化を推し進める中、トヨタが今なぜ、新しいカンパニーまで立ち上げてスポーツモデルを発売するのかを疑問に思う声もあるようだ。その答えは、GRブランド発表会にサプライズ登場した豊田章男トヨタ自動車株式会社・代表取締役社長の言葉の中にある。

「GAZOO Racing」は11年前、豊田氏を中心に、同好会のような状態でスタートした。2台の中古のアルテッツァを改造し、ニュルブルクリンク24時間レースに参戦した氏は、その体験をこう語る。

「悔しかった。世界の自動車メーカーが最新のスポーツモデルやプロトタイプを駆ってワークスカラーで走る中、我々は中古のアルテッツァで闘った。当時はそこで闘うスポーツカーを持っていなかったんです」

世界と、新車で闘いたい。それは、自動車を、モータースポーツを心から愛する氏にとって、当然の夢となったのではないか。

当時はゲリラ的に行われていたこのニュルへの挑戦は、氏の熱意により次第に社内で共感を呼ぶようになってゆく。「もちろん、反対勢力のほうが多かったけどね」 そう豊田氏は振り返るが、エンジニアが、メカニックが、そしてプロのレーシングドライバーまでもが、活動に賛同していく。

いつしか大きなムーブメントになった同活動はさらなる拡大を果たし、2015年、トヨタ、レクサス、GAZOOと3つに分断していたモータースポーツ活動が「GAZOO」の名の下に統合されたのだ。

つまり、今産声をあげたばかりの「GR」は、豊田氏のドライバーネームである「モリゾウ」という一人のクルマバカの信念と、モータースポーツへの愛の結晶とも言える。そして楽しいクルマを消費者に届けたいという、見事なまでにブレのない情熱に支えられているのだ。カメラに向かって笑顔で語る「I LOVE CARS!」のすべての意味が、「GR」には詰まっている。

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text:今井優杏/Yuki Imai
レースクィーン、広告代理店勤務を経て自動車ジャーナリスト。WEB、自動車専門誌に寄稿する傍らモータースポーツMCとしての肩書も持ち、サーキットや各種レース、自動車イベント等で活躍している。バイク乗りでもあり、最近はオートバイ誌にも活動の場を広げている。
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