欧州車って何だ。

欧州車って何だ。

アヘッド 欧州車

photo:長谷川徹

コモディティ化の先進国

アヘッド 欧州車

text:岡崎五朗


ドイツを筆頭とした欧州の高い平均走行速度は優れた基本性能をもつクルマと、それを求めるユーザーを育てあげた。以前、メルセデスのエンジニアにインタビューをしたとき、欧州のユーザーがクルマに求める要素として「接地感」が常に上位に入ると聞いた。そんな言葉を使うのは日本では一部のクルマ好きと自動車評論家ぐらいなものである。
 
一方、日本人がクルマに求めるものの定番は燃費、価格、室内の広さ。となれば当然、そういうクルマが増えることになる。いずれも重要な項目だが、そのことと、基本性能なんてどうでもいいと考えてしまうのは別問題。基本をしっかり磨き込んだクルマは飛ばさなくても楽しいし、気持ちがいい。そのことを知っている以上、走りなんてどうでもいいなんて僕には言えない。
 
走らせて楽しいクルマが減ったことが、日本人のクルマ離れの一因になっているのではないか。事実、そんな状況にアンチテーゼを投げかけたマツダは成功を収めつつあるし、トヨタも豊田章男社長の「もっといいクルマ」という呼びかけを原動力にハチロクをリリース。ホンダがS660を出したのも決して儲けることが狙いではないはずだ。
 
このように、日本の自動車メーカーはついにクルマへの興味を再び掘り起こすアクションを起こしはじめた。しかし、スポーツカーを出したからといって、世界でもっともクルマにシラけた日本人が一転してクルマ愛を取り戻すかといえば、現実的には難しい。それほど日本人のクルマ離れは深刻だ。

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ではどうすればいいのか? それを見いだしたメーカーこそが、日本だけでなく、長期的にはグローバルでの勝者になると僕は見ている。日本ほどではないが、クルマのコモディティ化は世界中で進行中であり、欧米の若者の間ではすでにその傾向が現れ始めている。いまはまだマイカーを渇望している途上国もいずれ同じ道をたどるだろう。

つまり、世界でもっともクルマのコモディティ化が進んだ日本は、世界でもっとも先進的な自動車マーケットであり、そこで有効な提案ができれば、その成功体験はいずれ間違いなくグローバルビジネスに利用できるということだ。
 
自動運転や次世代エコカー、進化したカーシェアリングなど、様々な技術や仕組みが研究されているが、それと同時に僕が注目しているのが「見せ方」と「売り方」の進化だ。クルマは最低でも100万円はする高額商品である。

なのになぜ販売店はそれに見合ったクォリティに達していないのだろう? 以前から不思議だった。そういう商習慣なんだよと言われればそれまでだが、素朴な疑問のなかに答えが隠されていることもある。

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メルセデス・ベンツ日本はブランドの発信拠点として東京都と大阪にメルセデス・ベンツ コネクションを開設し、すでに450万人が来場。この動きがドイツ本国で評価され、同様の取り組みがグローバルで始まった。

BMWも先日、かつてない規模の体験型施設である「BMWグループ東京ベイ」をお台場にオープン。試乗車として80台もの最新モデルを用意しているのが最大の特徴で、その背景には「試乗こそが究極のブランド体験である」という思想があるという。

日本メーカーではレクサスとマツダが似たような取り組みをしているが、残念ながらメルセデスやBMWほどの水準には達していない。他メーカーに至っては新たな取り組みの動きすら見えてきていない有様だ。日本マーケットの先進性に誰よりも注目しているのが輸入車メーカーだというのはちょっと寂しい。
 
クルマのコモディティ化を食い止めるためには、まずは作り、売る側が、現実はどうあれ「利益率の低いコモディティ商品である」という意識を捨て、「憧れの対象になり得る高額商品を売っている」というスタンスへとパラダイムシフトすることが必要なのではないか。

そんな感覚を磨き、クルマに新しい価値を与えていく実験室として、日本ほどおあつらえ向きのマーケットはない。そのことに日本メーカーは早く気付くべきだ。

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▶︎お台場にオープンした「BMW Tokyo Bay」。認定中古車の展示やドライビングエリア、国際会議ホール、カフェなどの巨大な複合施設。BMWとMINIの全ラインアップが試乗できる(東京都江東区青海2-2-15)。

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text:岡崎五朗/Goro Okazaki
1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイトなどで活躍。テレビ神奈川の自動車情報番組『クルマでいこう!』に出演中。

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