三好礼子 バイクとクルマのその後に

「私は富士山に試されているだけなのよ、自分の"好き"を」

アヘッド 三好礼子

「突き詰めるといえば聞こえはいいんだけど、やりすぎちゃうのね」

「根がまじめだからとことんやらないと気が済まないんだけど、結局それは自分も他人も疲れさせちゃうってことに気が付いたのがここ数ヶ月」

当時の礼子さんの言葉である。しきりに自分にとって「やり過ぎない」ことがいかに大事かを言葉にしながらも、インタビューの最中も、いろんなことが気になって仕方がないようで、立ったり座ったり、別の資料を探しに行ったり、終止じっとしていることがなかった。

また「癒し」についてもよく話した。「本当に癒されなきゃいけない人が来たら癒されるし、その人が癒されるとまた自分も癒される」「だれだれのためになんていうより、自分のためにやっている方が結果として人も癒されるんですよね」といったふうに。

そんな取材を通しての出会いだったのだが、2010年の夏、ラリー・モンゴリアに礼子さんと一緒に参戦することになり、その年は頻繁に連絡を取り合い、一緒に練習をし、何度か礼子さんの家に泊まったりもした。それは私にとってはドライバーとしての初挑戦であり、ナビゲーターを務めてくれた礼子さんにとっては10年ぶりのラリーだった。

礼子さんは帰国後のインタビューで、「この10年、自分にとってラリーとは何だったのかを考え続けてきた。そしてモンゴルの地で、私は地球を駆けることが好きだったんだと分かった」と語っている。そしてこの頃、礼子さんはすでに「トレイルランニング」という次の目標をしっかりと見据えていたのだった。

モンゴルから帰国して間もない2010年の初秋、礼子さんは信越五岳トレイルランニングレースを走った。その名の通り、斑尾山、妙高山、黒姫山、戸隠山、飯縄山という5つの山を結ぶ全長110㎞を22時間以内に走るレースである。礼子さんは制限時間ぎりぎりでゴールし、このレースで最後の完走者となった。

私はこのとき、アシスタントとして礼子さんをサポートしたのだが、なるほどこれはクルマを使わないラリーだと思った。実際トレイルランニングにはまるラリー仲間も少なくはなく、それだけこの2つの競技は共通するものがあるのだろう。

その後2011年、2012年と続けて、世界最高峰と言われる100マイル(161㎞)マラソン、「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」に出場し見事完走している。

自分が選手として走ることと並行して、今、礼子さんが情熱を傾けているのが、「ウルトラトレイル・マウントフジ」だ。静岡県と山梨県の2つの県と10の市町村を結んで富士山を一周する100マイルレース。2012年の春に第一回が開催され、彼女は実行委員の一人として、このレースの実現に大きく貢献した。

オートバイやクルマで人のつくった道を走り、砂漠の道なき道をルートを探しながら走り、今は道をつくる毎日だ。

「私ね、若い頃からゴミを拾うことが夢だったの」と笑う。

10代でのオートバイ日本一周。時は高度経済成長真っ盛り。日本中、海岸線はゴミだらけだった。海辺でひとりおにぎりをかじりながら、いつか日本中のゴミを拾いたいと思った。でも若いときは他に面白いことが山ほどある。立ち止まってはいられなかった。

ゴミ拾いを始めたのは朝霧高原に移り住んでから。犬の散歩がゴミ拾いの時間になった。が、突き詰めるのが生来の性格。気がつくと10‌㎞歩いたなんてこともしばしば。数年も経つと家の近くでゴミ拾いをする場所はなくなっていた。そんな頃、このレースの企画が持ち上がった。

「それでみんなに呼びかけたの。ゴミ拾おうよって」。礼子さんは自分で言い出したたことは自分でやる。

人はあてにしない。基本は一人。それが彼女のスタンスだ。「100人来てくれたら、今日ははかどるなってうれしい。二人なら、今日は密なゴミ拾いができるなってそれもうれしい。一人なら一人で愉しい」 

もし誰かが呼びかけたとして、自分だったら……きっと忙しくて行けないだろう。そう考えると、誰も来なくて当たり前。ひとりでも来てくれることがどんなに有りがたいことか、と彼女はそう考える。だから彼女の周りには自然と人が集まるのだろう。

そして「ゴミを捨てるのは悪。拾うのは正しいこと」と考えているわけではない。「ゴミってね、もー面白いの。この間もコカ・コーラの初期型の瓶が出て来たり。まぁ先は長いからいちいち感動もしてられないんだけど、プルトップの歴史が見えたりね」と本当に楽しそうに話す。

自然に帰る素材しかなかった頃にはゴミを埋めるのは悪いことではなかったはず。それが次第に素材が変化していった。今は林業の人も、山を登る人もゴミは捨てなくなった。だからやっているうちにまた時代は変わって、ゴミを捨てないことが当たり前になり、きっとゴミはなくなっていくはずと信じている。

「私はね富士山に試されているだけだと思うの。おまえの〝好き〟はどれだけ本当なのかってね」

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