ブランドとは何か

25周年を迎えた 「レクサス」の第二段階 まるも亜希子

アヘッド ブランドとはなにか

夏の終わりに、一通のインビテーションが届いた。ファッションブランドの新しいショップがオープンしたか、新進気鋭のシェフがレストランを構えたか。そんな印象を受けたあと、贈り主を見て驚いた。記されていた「Lexus International」とは、昨年6月に独立したレクサスのヘッドオフィスである。そして、はじめのひと言がスッと心に響いた。

〝都市とつながり、人と人、人とクルマが交わる〟。こんなテーマのもとに、レクサスが考えるライフスタイルを体験できるスペース「INTERSECT BY LEXUS TOKYO」が、南青山にオープンしたという。これまでのレクサスが持っていたラグジュアリーな空気感は同じながら、もっとずっと開放的でフレンドリー。コーヒーでも飲みに、ぶらりと立ち寄ってみたいと自然に思えた。

1989年にアメリカで誕生した「レクサス」は、もうすぐ25周年になる。順調に成長を続け、今では安定した顧客に恵まれているものの、エントリーユーザーの獲得競争は熾烈さを増すばかり。その中でどう勝ち残っていくのか。そして日本への導入は2007年と、若いブランドゆえ、「セルシオ」などトヨタのかつてのプレミアムモデルが、いまだに見えない敵となっている。

メルセデス・ベンツ、BMW、アウディというドイツのプレミアムブランド御三家の牙城を、どう打ち崩していくのかも悩ましい。こうした課題をそれぞれに抱える中で、今、レクサスは大きく変わり始めた。レクサスはどこへ向かっていくのだろうか。

それについてコメントを仰いだ、Lexus International PRコミュニケーション室長・本間英章氏の言葉は印象深かった。

「我々は覚悟を決めました。これまで、日本から生まれた初めてのグローバルブランドとして、その価値を発信してきたつもりでしたが、もしかするとまだ甘いところがあったかもしれません。でも今回は、レクサスを真の意味でのグローバルプレミアムブランドとして確立していくという覚悟を決め、そのためにさまざまな取り組みを行っています」

まず最初にやったことは、とことん議論することだった。ブランドとは何か。ラグジュアリーとは何か。デザインへの意識や、社会性、自然回帰についてなど、社外の人の意見にも積極的に耳を傾け、これからのレクサスというブランドの価値観を突き詰めていったという。とくに、レクサスが持つべきブランド価値として、大きく3点を明確にした。

ひとつは「ひと目でそれと分かるデザイン」だ。これまでレクサスは、車種ごとにガラリと違ったデザインを採用していたが、スピンドルグリルに代表されるように、思い切ったイメージチェンジをし、レクサスとして統一したデザインを取り入れている。ふたつめには、エモーショナルな走りなど、動力性能もアドバンテージを持つことだ。

アウトバーンを日常的に使うことを想定したドイツ御三家。それと並ぶくらいに走りを磨くことを自らに課したことになる。そして最後は、最先端の技術を取り入れることである。これは、世界をリードしているハイブリッド技術、環境技術を柱としていくことだ。この3点は新生レクサスへの布石として、昨年フルモデルチェンジした「GS」から展開している。

そして次は、それをどうコミュニケーションしていくかだ。「昔のトラディショナルなラグジュアリーではなく、プログレッシブ・ラグジュアリーを伝えたいということです。ゴージャスではなく、コンフォタブル。排他的ではなく、開放的。そういったものを提案できるブランドでありたいと思っています」と本間氏。しかもそれには、時代を先取りしていくスピードが欠かせない。「Lexus International」への組織改革は、意思決定のスピードを得るためでもあったというから、レクサスは本気だ。

実際に訪れてみた南青山のスペースは、壁一面のオブジェやテーブル、本棚、カップやシュガーポットなどすべてがセンスよく、過ごす時間や人を思いやる温かさがあり、とても居心地が良い。客層は若い女性グループから、打ち合わせらしきクリエイティブ系の人たち、ひとりくつろぐ男性など、周辺のカフェやバーと変わりない。

そもそも、銀座でも六本木でもなく南青山という場所のチョイスが、すでにこれまでのレクサスとは違うことを物語る。

「ただ来客数を稼ぎたいのであれば、銀座だったでしょう。でも我々は成果を急ぐのではなく、別の指標を持っています」。

クルマに乗らずとも、レクサスの価値観を共有してもらいたい。そしていつかクルマを買う時に、レクサスを思い浮かべてもらいたいのだと。何年掛かるか分からない。伝わるのかどうかも分からない。でも、それをやらなければ真のグローバルプレミアムブランドへのストーリーは始まらない。覚悟を決めた「レクサス」の姿は、日本が世界に誇るべきサムライと重なっている。

INTERSECT BY LEXUS -TOKYO
住所:東京都港区南青山4-21-26
TEL:03(6447)1540
営業時間:1F CAFE&GARAGE 9:00〜23:00
               2F LOUNGE&SHOP 11:00〜23:00
URL:www.lexus-int.com/jp/intersect

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。
ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。

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