岡崎五朗のクルマで行きたい VOL.62 “いいクルマ”の答

アヘッド 岡崎五朗のクルマでいきたい

けれど、モータージャーナリストどうしでは、そのあたりを究極まで単純化した会話が繰り広げられている。たとえば僕がまだ試乗していない○○というクルマにA氏がひとあし早く海外で試乗してきたとする。

「○○どうだった?」と僕が聞くと、A氏は「良かったよ!」と答える。必要なのはたったこれだけ。なんら具体的な話をしなくてもピンとくるのだ。

もちろん、双方とも専門家だから、開発コンセプトはあらかじめ理解しているし、そのメーカーの勢いや開発動向なども頭に入っている。そういった様々な前提情報を共有したうえでの「良かったよ!」なのだが、それにしてもあまりにあっさりしすぎててなんだかなぁ…思うだろう。

ほんの数秒のやりとりで相手の言いたいことが伝わるのは、実のところ「いいクルマ」の定義が似通っているからに他ならない。もちろん、モータージャーナリストのなかにもいろいろな価値観をもった人がいるが、たいていの場合、価値観は近い。では僕らは何をもって「いいクルマ」と評するのか?

答えは「乗り味」だ。実に曖昧模糊とした言葉だが、クルマの魅力を決定づけるのは究極、そこだと思う。速くなくてもいいし、スポーティでなくてもいい。もちろん速くてもいいし、スポーティでもいい。3気筒でも12気筒でも気にしない。マルチリンクかトーションビームかなんて関係ない。価格もそう。要は実際に乗ってみて、ああ気持ちいいなとか、ああ楽しいなと思えるかどうか。長年多くのクルマに試乗し、多くのモータージャーナリストがたどり着くのがこの「乗り味」なのである。クルマを選ぶ際、皆さんも乗り味に目を向けてみてはいかがだろうか?

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