1976年のFUJIを再現 映画「ラッシュ/プライドと友情」

アヘッド 映画「ラッシュ/プライドと友情」

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個人的な話で恐縮だが、僕がこの映画の存在を初めて知ったのは2011年の夏のことだ。当時ヨーロッパでヒストリックF1選手権(FIA ヒストリック・フォーミュラ・ワン)に1976年型マーチ761で出場していたクラシック・チーム・ロータス・ジャパンの代表、久保田克昭氏の元に、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで行われる撮影に参加して欲しいという打診が来たのがきっかけだった。

text:藤原よしお [aheadアーカイブス vol.135 2014年2月号]

●映画「ラッシュ/プライドと友情」
1976年のF1グランプリを舞台に繰り広げられた、伝説的なF1レーサー、ニキ・ラウダとジェームス・ハントの壮絶なタイトル争いとライバルを越えた二人の絆を映画化。2月7日よりTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー。

正直に告白すると、久保田氏からわずか4台のF1マシンで行われた撮影風景の写真を見せてもらった時点では、ロン・ハワードがどれほど本気に当時のF1シーンを描こうとしているのか、想像できなかった。その一方で、往時の各ドライバーの仕様を完璧に再現したベル・スター・クラシックやレーシングスーツを用意したり、わざわざエイヴォンのスリックタイヤにグッドイヤーのレターをマーキングしたりと、細部のディテールに拘りをもつ姿勢に好感が持てたのを覚えている。

そんな彼らのディテールに対する本気ぶりを実感したのは、それから間もなくのこと。突然映画のプロデューサーから僕の元に、物語のクライマックスとなる富士に出場したティレルP34やサーティースTS19などのディテール、そして当時の映像を入手できないか? といった仔細なオーダーが届いたからだ。
●「ニキ・ラウダ」の駆る「フェラーリ312 T2」
映画の舞台である1976年は、前年度のチャンピオンを表すゼッケン「1」を付ける。映画では「BELL」のヘルメットを被っているが実際には写真の「AGV」も併用した。

結果としてこの徹底的な拘りの姿勢(そもそもこのご時世にタバコロゴを映しているのがスゴい)が、映画の完成度をさらに高めているのは間違いのないところだろう。個人的には冒頭で描かれる1970年のF3シーンから、その描写の素晴らしさに終始圧倒されっぱなしだった。

もちろん、レースを描いた映画には『グランプリ』『栄光のル・マン』『レーサー』など(映画自体の評価はともかく)数多くの名作が存在する。マニアの中には、『ラッシュ』の史実と違う場面や、ディテールの差異を指摘する意見があるかもしれない。しかし、過去の作品がいずれも 〝今〟 のレースシーンを撮影しているのに対し、『ラッシュ』は、2013年に1976年の世界を再現しようと試みている点が決定的に異なっている。無論、完全に過去を再現するのは不可能だが、CGを使いながらもなるべく 〝生〟 の走り、迫力、空気感を再現しようとした製作陣の手腕には素直に賞賛を送りたい。

さらにハント役のクリス・ヘムズワース、ラウダ役のダニエル・ブリュール、そしてその脇を固める俳優陣の名演ぶりも素晴らしい。まさに〝生き写し〟 のような彼らの好演のおかげで、映画のラスト数分間に流れる映像は、特別なものとなって僕らの胸に押し寄せてくる。
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