定番とは何か

アヘッド 定番とは何か

究極の定番は ポルシェ911だった

アヘッド 定番とは何か

text:石井昌道


定番とは本来ファッション用語で、一定の需要が保たれているため商品番号を変えずにずっと生産され続けるものであり、代表格はリーバイス501など。

自動車では、あえて流行を造り出して買い替えを促すモデルチェンジが古くから常識化しており、商品番号を変えないまま生産され続けることは今や皆無だが(65年間生産されたVWタイプIがもっとも長寿)、同じ車名のままずっと支持されているモデルは定番と呼んでいいだろう。

日本は流行のサイクルがことさら早いというのか、ユーザーが飽きっぽいのか、自動車メーカーや車種が多いわりには古い車名のまま生き残っているモデルは多いとは言えない。乗用車でめぼしいのはトヨタのクラウンやカローラ、日産スカイライン、ホンダ・アコード、三菱パジェロ、スズキ・アルトにダイハツ・ミラぐらいだろうか?

車名だけではなく、コンセプトやそのモデルの役割、人気の衰えがないことまでを定番の定義として考えると、カローラだって該当しない。その他のモデルも、かつての勢いはなくなっている。人気を維持、あるいは上向かせるには、実質的にはマイナーチェンジであっても車名を変更するのが手っ取り早いのだ。

その一方、欧州のメーカーはあまり新しい車名を使いたがらない傾向が強いようだ。たとえばハイブリッドカーにしても、日本ではプリウスやアクアなどのように専用車にしたモデルが成功しやすいが、欧州ではアウディA3のe―tronやメルセデス・ベンツSクラスのS400hなどというように既存車種の1グレードとして設定される。

トヨタも欧州でプリウスを販売しているが、同クラスながらわざわざオーリス・ハイブリッドも用意するのは、そういった傾向を見越してのことだという。いろいろと例外はあるが、全体的な傾向として日本は新しモノ好き、欧州はコンサバというのは間違いないだろう。

そういった地域の特性に左右される面はあるとはいえ、誰もが納得する定番たるには、やはり商品の魅力が持続しなくてはならない。そう考えて、本当の定番を探すとポルシェ911に行き着く。

長きに渡って連綿と造り続けられ、今なお人気車であり続けているという意味ではおそらく世界一のモデルだろう。ポルシェは他の自動車メーカーに比べると極端に宣伝費をかけないが、それでも人気に衰えが見られないのは定番の証。「需要マイナス1台を供給」といったような考え方でブランドを守っているのも巧みなところだ。

その911であっても長い歴史のなかでは、もっと拡販しようと豪華、快適志向に振ってみたり、スポーツ路線を強めて硬派になったりとコンセプトに多少の揺らぎはあった。運動性能的にはミドシップのほうが有利なことをわかりつつ、RRであり続けることに造り手が葛藤した時期もあったはずだ。それでも「最新は最良」であり続けるための努力を怠らず、今まで生きながらえているのだ。

現在は、ついにNAエンジンからターボ・エンジンへのスイッチが決まり、ファンの間で物議を醸している。ネガティブな声も聞かれてはいるが、空冷から水冷に移行したときと同様、さほど影響を受けずに人気を維持するのだろう。自動車は環境性能や安全性能への要求が時代とともに厳しくなっていくので、王者の911といえど定番であり続けるためには、技術革新を怠らないことが常に求められる。

それだけ難しいからこそ、定番と呼ばれることの価値は大きいのだ。

901

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1963年の発表当初は「901」と名乗っていたが、1964年のパリショーで、中央に「0」を持つ3桁のモデル名はプジョーが商標登録していることが判明。車両名称を911に変更する。型式は901のまま。通称「ナロー」。

930

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2代目はアメリカの安全基準に対応して前後バンパーを大きくしたので通称「ビッグバンパー」と呼ばれる。1974年から1989年まで製造された息の長いモデル。930型はスーパーカーブームを牽引したことでも有名。写真は930ターボ。

964

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3代目は約8割ものパーツが新たに設計されたが伝統的なフォルムは継承された。中古車市場では、比較的手が届きやすいと言われた964型だったが近年は空冷ポルシェの中でも人気が高く相場も高騰している。1989年〜1993年。

993

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4代目の993型は、マニアの間では最後の911と呼ばれている。同モデルの生産終了により、30年以上に渡るポルシェの空冷エンジンが幕を下ろした。室内レイアウトにおいてもナローを受け継いできた最後のモデル。1993年~1998年。

996

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5代目の996型は911シリーズ始まって以来のフルモデルチェンジとなる。水冷化されて大型化したが軽量化を推し進めたのでスポーツ性能は大幅に向上している。涙目型のヘッドライトは後期型では形状変更された。1998年~2004年。

997

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6代目の997型は、996型をベースに丸いヘッドライトが復活するなど、デザインを大幅に変更させた。21世紀になってスポーツカーとしての性能だけではなく、ラグジュアリーな要素が求められるようになった。2004年~2011年。

991

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7代目の991型はアルミを多用することで剛性を高め軽量化を図った。外観は997型と似ているが、左右ライト間を広げるなど細かく変更している。ホイールベースを延長、トレッドも拡大して運動性能を向上させる目的。2011年〜現行。

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text:石井昌道/Masamichi Ishida
自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、ワンメイク・レース等への参戦経験も豊富。エコドライブの研究にも熱心で、エコドライブを広く普及させるための活動にも力を注いでいる。

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