今、私が伝えたいこと

日本の旧車の現状と行く末

アヘッド 今、私がしたいこと

text:後藤 武


最近、ヨーロッパやオーストラリアから2ストロークやクラシックバイクに関する色々なニュースが飛び込んでくる。例えば先日はイギリスで80年代に行われていた「PROAMカップ」というRZ250によるワンメイクレースがシルバーストーンサーキットで再現された。

30台のRZ250がこのレースのためにレストアされ、MotoGPの前座で当時と同じような激しいバトルが繰り広げられた。イギリスのバイクショップIDP MOTOが費用を捻出。イギリスのRDクラブのメンバーがボランティアで参加して実現したレースだった。

PROAMカップから世界GP500まで登りつめたニール・マッケンジーがボランティアとしてマシンの整備に参加し、そして30年ぶりに開催されたこのレースにライダーとしても参加して優勝している。

イタリアでは2スト好きな人たちが集まって「250GP」がスタートした。TZ250やRS250など、最近は見かけなくなった日本製のレーシングマシンによる本気のレースが開催されている。ヨーロッパではTZのミーティングも人気で、毎回数百台のエントリーがある。TZ専門のパーツを扱う業者もたくさんいて、古いレーシングマシンを維持していくための環境が整っているのだ。

日本で使い道がないからとバイクショップの片隅で放置されていた埃まみれのTZやRSはヨーロッパの人達が手当たり次第に買い付けてヨーロッパに持ち帰り、丁寧にレストアして整備され、再びサーキットを走っている。

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▶︎ヨシムラとモリワキを代表する往年の名レーサー、グレーム・クロスビーが手掛けた「XR69レプリカ」は、イギリスのハリスによってフレームを完全に再現。フォークもゼロから新作してキャリパーもマグネシウムで製作。マフラーもヨシムラ製にするなど徹底している。ちなみに「XR69」とは「GS1000R」の型式名である。


ル・マンではクラシックバイクの耐久レースが行われ、70年代の耐久シーンが再現された。オーストラリアのフィリップアイランドでは、「クラシックマスターズ」というレースが開催され、世界中からクラシックバイクレースの選抜チームが集結してクラシックバイクレース世界一が決められている。

他にもヨシムラやモリワキのライダーとして知られているグレーム・クロスビーは、自分が乗ったワークスマシン、スズキXR69やモリワキのZを忠実に再現してコンプリートマシンとして販売。

ヤマハ2ストマニア達は最強最速の2スト、TZ750を復活させるためクランクケースのキャスティングを製作し、自分達で新品のエンジンを作りあげた。これらのマシンが世界中のクラシックバイクレースで本気の戦いを繰り広げている。

こういった動きは最近になって始まったものではない。古いレーシングマシンを大切にしようという動きは昔からあってビンテージTZ専門ショップやビンテージバイク用タイヤメーカーも90年代からあった。自分達が愛したモーターサイクルを守ろう、歴史を残していこうというヨーロッパの人達の気持ちはとても熱いのである。

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▶︎「CROZモリワキレプリカZ Bike」は、かつてクロスビーがレースで使ったモリワキZの再現車。共に10台限定で発売された。


日本では今、2スト人気が盛り上がりつつある。NSR250やRZ250をはじめとして2ストの中古車価格は軒並み値上がりしていく一方だ。少し前、安く手に入れられて速くて面白い、という2ストの図式はもう存在しない。しかしここでひとつ危惧することがある。一過性のブームで終わってしまうのではないかということだ。

少し前、カワサキのZが大変なブームになった。中古車価格は跳ね上がり、気軽に手を出せなくなってしまった。その結果、熱病のように浮かされたムーブメントは急激にクールダウンした。もちろん好きな人達は乗り続けているのだけれど車両やパーツの値段は高くなったまま。以前のように気軽に乗ることは難しい。2ストでもあと1年、2年で同じことがおこるのではないかと考えてしまうのである。

有名な撃墜王、故坂井三郎氏は、自分が零戦に乗っていた時に使っていたものをすべてアメリカに寄付するのだと言ったことがあった。日本で粗末に扱われていた自分のアイテムをアメリカの人達が歴史的なものとしてどれだけ大切にしようとしているか知っての発言だった。

欧米に比べて、歴史的な遺産、ヘリテイジを大事にする意識は我々が完全に負けている。しかし、古いものが見直されている今だからこそ、欧米のようにヘリテイジを大事にして、その上に自分達独自のモーターカルチャーを築くことができるのではないか。

60年代から80年代にかけて、日本は2ストで世界のレースシーンを席巻した。いわば日本を世界一のバイク大国にした立役者である。そんな歴史をもう一度思い起こしたうえで、今の2ストブームを一過性のもので終わらせないよう、大事にしていけないかと思ってしまうのである。

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text:後藤 武/Takeshi Goto
1962生まれ。オートバイ雑誌『CLUBMAN』の編集長を経て、現在は世界を股にかけるオートバイ、クルマ、飛行機のライター&ジャーナリスト。2ストと言えばこの人、と言われるほど、2ストを愛し、世界の2スト事情に精通している。

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