今、私が伝えたいこと

なぜマツダとスバルは成功したのか

アヘッド 今、私がしたいこと

text:清水和夫


少し前まで、日本ではハイブリッドと軽自動車しか売れない時代が続いてきた。販売の実績をみても、軽自動車が過半数をしめ、登録された乗用車の約50%がハイブリッドだった。この数字を見せつけられると、どんな豪腕な経営者でもハイブリッドがないと会社が潰れると慄いてしまう。

その当時、ハイブリッドが作れなくて迷走していたのがマツダとスバルだった。

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マツダは長い間、自立的な経営ができなくて、日本の銀行とフォードに支配されてきた。それでも経営は赤字が続き、何度も地獄を見てきたのだ。2005年ごろ、まだフォードの支配下に置かれていたときに、「自分たちに何ができるのか」と、自社を見つめなおし、世界の常識を打ち破るスカイアクティブテクノロジーを思いついた。

エンジンとシャシーとボディというハードの刷新だけでなく、デザインの統一感を具現化すべく、クルマ作りの原点に立ち返ったのである。

エンジンは高圧縮ガソリンと低圧縮ディーゼルという業界の常識を覆す先進的な技術を実用化した。全てのスカイアクティブテクノロジーが揃ったCX5に乗ったときに驚いたのはエンジンだけでなく、ドライビングポジションを正しい位置にレイアウトし、視界性能とペダル配置にも気を配っていることだった。

さらに高級車に採用されるオルガン式アクセルペダルの採用など、ドライバー中心のクルマ作りが行われていたのだ。

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ペダル配置の最適化に関してはエンジンの搭載位置を前方にずらすなど、基本パッケージにもメスを入れていた。その後、続々とスカイアクティブテクノロジーで開発されたモデルが登場したが、圧巻はCX3というスモールSUVだ。

このモデルは日本ではディーゼルオンリーで市販され、Bセグメントにもかかわらず、オルガン式ペダルが踏襲され、ヘッドアップディスプレイや見やすく使い易いカーナビなど、煩雑な操作が要らないドライバーインターフェイスを実現したのである。

一方でプリウスのシステムをトヨタから供給してもらい、待望のハイブリッドをアクセラで実用化した。しかし結果は悲惨だった。アクセラに占めるハイブリッドの割合は7%前後。ユーザーはマツダにはハイブリッドは期待していなかったことが判明したのだ。この失敗は笑い話で済まさないほうがいい。

つまり、マツダのハイブリッドは売るために企画されたもので、マツダが作りたかったクルマではないことがユーザーにバレていたのだ。マツダの強みは何か。スカイアクティブという技術ではなく、「人間中心のクルマを根っこから作る」という強い信念なのである。それがデザインからもユーザーに伝わり、走ると全身で感じることができる。そこがマツダの魅力なのである。

マツダとならんでスバルも好調だ。アメリカでバカ売れしているのが高収益の理由だが、重要なことはアメリカ人がスバルのどこに惚れているのか。それは10年以上前から続く安全へのコダワリではないだろうか。

スバルは水平対向エンジンとAWDがオンリーワンの技術であると主張するが、現実的には技術という手段の先にある安全という価値をしっかりとアメリカで評価されているからだ。

2012年から始まったスモールオフセットという衝突テストがアメリカの保険協会IIHSで実施されたが、トヨタやメルセデスが対応に遅れたものの、スバルはフォレスターやアウトバック、最近ではXVなどの全てのモデルですでに対応していた。

こうした地道な安全性のこだわりがアメリカで絶大な信頼を築いたのである。

スバルもハイブリッドが作れなくて苦労したメーカーだったが、マツダのハイブリッドの失敗から学ぶなら、ユーザーがスバルに何を求めているのかを見つめ直し、しっかりと自分を意識することではないだろうか。今、スバルに対する期待は大きいはずだ。

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text:清水和夫/Kazuo Shimizu
1954年生まれ。自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。近年注目の集まる次世代自動車には独自の視点を展開し自動車国際産業論に精通する。

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