クルマやバイクのテイストとは何か

『ヴィンテージライフ』が表現するテイストのありかた

text:山下敦史

〝テイスト〟 というのは危険な言葉で、うっかりするとイメージだけの安易な表現として使ってしまいがちだ。テイスト、と口にするとき、いったい心の中では何を求めているのか。そこに向き合う必要がある。

そんな思いを抱きつつ、季刊誌『ヴィンテージライフ』の編集長を務める陰山惣一さんにお話をうかがうことになった。『ヴィンテージライフ』は不思議な雑誌だ。クルマやバイク、時計に自転車、多くの〝古くていいもの〟 が登場するのだが、決して飾られた古美術然としていない。今に息づいている。雑誌の名まえの通り、ライフの中で多くのヴィンテージが調和しているのだ。

「古いモノで今遊んでることが面白い、僕はそう思うんですよ。博物館なんかで、こんな古いものをいっぱい持ってるから取材してくれっていわれても全然響かないんですね。例えば持ってるのは古いカメラ1台で、ボロボロだけど毎日使ってるとか、今それを使って生活しているとか、そういう〝使ってる感〟 がないと、カッコよく見えない。ヴィンテージオークションのブックとか見れば古くていいものはいっぱい載っているけど、それだけでは興味がわかない。ロンドンで取材したオジさんが、ツイードのジャケット着てM型ライカを持ってたら、欲しくなるじゃないですか。だから誌面で使われる写真も、「そのモノがある空間や、そこにいる人を見せたい」という基準で選ばれるのだという。

例えば最新号で取り上げられたヒストリック・カーレース〝グッドウッド・リバイバル・ミーティング〟 の模様も、クルマ専門誌ならまず選ばないようなカットが多く使われているのだとか。

「例えばこの黄色いエランのページ。クルマ雑誌ならエランが隅で見切れているからNGですよね。でも、ボクの場合はオジさんの笑顔をまず見せたい。右ページではドアから彼の足が出て、テールが光ってる。『あー、暖機してんだな 』とか『手前はロータスかな?』とか、僕がファインダー越しに見ている現場の空気感をそのまま伝えたいんです。ヴィンテージライフのテイストとは、取材先の空気感であり、空気感とはいろいろな要素の組み合わせだと思いますね」

好きなモノを出したい、好きな人を出したい。そこを根底に「古い時計の雑誌とか、古いカメラの雑誌とかってのはあるけど、それを全部一度に見たいんだっ、て『ヴィンテージライフ』を始めようと思った」のだという。
「(『ヴィンテージライフ』見ると)編集長にすごく知識がありそうじゃないですか。でも全然そうじゃなくて。ボロが出るから、なるだけ僕は出ないようにして」

と謙遜する陰山氏だが、この後に続いた「雰囲気だけで作ってるんですよ」という言葉の奥には、知識自慢、ブランド自慢に陥ることなく、自分が〝いいと思った〟 その気持ちを最優先にしようという意志が見て取れる。だからこそ、「(『ヴィンテージライフ』には)自分の好きなものしか出てない。そこで統一がとれてるんじゃないですかね」と言い切れるのだろう。

そんな彼が興味を惹かれるのは「好きなものを貫いている」そして「人が作った想いを感じ取れる」ものなのだという。「ケータイだってデジカメだって、何年かしたら(陳腐化して)もう使わない。でもハッセルブラッドとかは60年経っても仕事に使えるじゃないですか。それがすごいと思うんですよね」。 

だから『ヴィンテージライフ』で紹介されるアイテムは息づいている。使っている場面が見える。そこに〝テイスト〟 を読み解く鍵がありそうだ。それは人格に似たようなものじゃないかと思う。合わないこともあるだろうし、欠点を含めて使い続けたいと思わせることもあるだろう。10年後、20年後、自分がそれを持っている姿を思い描けるのなら、きっとそれは自分にとって真に価値のあるもの、テイストを持つもののはずだ。

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