日本のクルマはどこにいく

アヘッド 日本のクルマ

今、バリューを見直すとき

アヘッド 日本のクルマ

●HONDA JADE
車両本体価格:¥2,920,000(HYBRID X、税込)
車両重量:1,510kg 
エンジン:水冷直列4気筒横置
総排気量:1,496cc
【エンジン】
最高出力:96kW(131ps)/6,600rpm
最大トルク:155Nm(15.8kgm)/4,600rpm
【モーター】
最高出力:22kW(29.5ps)/1,313-2,000rpm
最大トルク:160Nm(16.3kgm)/0-1,313rpm
JC08モード燃費:24.2㎞/ℓ

text:岡崎五朗

シーマやマークⅡが飛ぶように売れていたバブル期を除けば、いつの時代だってクルマの売れ筋はお手頃価格のものだ。けれど、いま売れているクルマたちの中身に思いを馳せてみると、いつの間にか進行していたとんでもない「トレンド」なるものが手に取るようにわかる。

トレンドというと聞こえがいいが、その中身はメーカー側がもつ「安くなければ売れない」という、なかば強迫観念のような思い込みに他ならない。それが本格的に表面化したのは2008年のリーマンショック。世界的な金融危機によって世界の自動車マーケットは大幅に縮小し、トヨタが赤字転落するなど日本の自動車メーカーも大きな打撃を受けた。と同時に、ユーザーのマインドにも変化が起こり、より安くて燃費のいいクルマを求めるようになったのはご存じの通りだ。

そこはわかる。僕も、生活を切り詰めてまでクルマにお金をかける必要なんてこれっぽっちもないと思う。

問題は、日本メーカーのクルマ作りがガラリと変化したことに多くのユーザーが気付いていないことだ。リーマンショック以降の日本車では、マイナーチェンジでスタビライザーを廃止する、ダンパーを安手のものに交換する、なんてことが当たり前のように行われるようになった。新型車に関しては企画段階からコスト削減が第一優先になり、ボディ剛性も、シートクッションや遮音材の質と量も落とし、心臓部であるエンジンやシャシーも古いものを使い回すようになってしまった。

外観だけは新しくしているからピカピカの新車に見えるけれど、乗ると安手のドライブフィールにガッカリさせられる…というのがここ数年の多くの日本車の実態だったのである。

当然、そんなクルマに乗ったって感動なんて得られない。感動しないから好きじゃなくなる。好きじゃなくなるとこだわらなくなる。こだわりがなくなれば「安くて燃費さえよけりゃなんでもいいヨ」となり、そういうユーザーの嗜好を受け自動車メーカーはますますコスト最優先のクルマ作りへとひた走る。典型的な悪循環である。

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●MAZDA CX-3
車両本体価格:¥2,808,000(XD Touring L Package/2WD 6EC-AT、税込) 車両重量:1,260kg 
エンジン:水冷直列4気筒DOHC16バルブ 直噴ターボ 総排気量:1,498cc 最高出力:77kW(105ps)/4,000rpm
最大トルク:270Nm(27.5kgm)/1,600〜2,500rpm JC08モード燃費:23.0㎞/ℓ

本当に? と思うかもしれないが、すべてのクルマに試乗してきた僕が言っているのだから間違いない。一昨年、VWゴルフが輸入車として初の日本カーオブザイヤーを獲得したのは、圧倒的な作り込みによってそんな日本の風潮に鋭い矢を放ったからに他ならない。
 
そこで気になるのはこの先も同じような状況が続くのかという点だが、嬉しいことに明るい兆しが見え始めている。たとえばホンダ・ジェイドとマツダCX-3。スターティングプライスはそれぞれ272万円と238万円。メーカーが売れ筋と見込んでいるのはさらに高価格帯のグレードだ。

SNSをみていると、価格設定が強気すぎるとか、なかにはぼったくりという言葉を使っている人もいるが、そこは違いますよ! と声を大にして言いたい。2台とも、内外装の仕上げはもちろん、目に見えない部分にもきちんとコストをかけて作り込んでいる。CX-3については別ページで書いたが、たとえばジェイドの場合、外部騒音を下げるためにサイドウィンドウのガラスを厚くしたが、その分ガラスが重くなるため、パワーウィンドウのモーターをコストの高い高出力タイプに変更しているのだ。

こうした部分はカタログには書かれていないが、クルマの質、言い換えれば長く付き合っていったときの満足度を大きく左右する。

値段だけみて「高い!」とリジェクトしてしまうのではなく、いったん冷静になって値段なりの価値がそこにあるのかどうかを見極めると、案外別の世界が見えてくるもの。日本からもようやくいいモノがでてきた今、ユーザーに求められているのはモノの善し悪しを見極める目を養うことだ。個人的には、ちょっと高いかな? と思えるようなクルマにこそ、今後は要注目だと思っている。

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text:岡崎五朗/Goro Okazaki
1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイトなどで活躍。テレビ神奈川の自動車情報番組『クルマでいこう!』に出演中。

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