LAST CHANCE 憧れのままでは終わらせない

アヘッド ラストチャンス

以前に比べて健康でいられる年齢が高くなってきているとはいえ、いつまでも体力や気力を維持できるわけではないはずです。憧れてきたことを実行に移すには今が最後のチャンスかもしれません。本当の自分と向き合って、もう一度だけ少し熱くなってみませんか。

超高級車に挑む

アヘッド ラストチャンス

●アストンマーティン ヴァンキッシュ
車両本体価格:¥31,490,000(税込)
総排気量:5,935cc(V型12気筒)
全長×全高×全幅:4,720×2,067(ミラー含む)×1,294mm
最高出力:573kW/6,750rpm
最大トルク:620Nm/5,500rpm
最高速度295km/h
0-100km/h加速:4.1秒
駆動方式:FR
トランスミッション:
6段オートマチック(タッチトロニック2)

text:小沢コージ

年齢は50歳前後。子供もそろそろ手離れしつつある。よし、今が最後のチャンスだ! 持ってた株も運良く値上がったし、昔から憧れていたスポーツカーを買ってみようと、思う人もいるかもしれない。だがそういうひとに向けて、これから非常に夢のない、所帯じみた現実話をするのでお許しいただきたい。

もちろん欲しいクルマが高くても300万円前後のマツダ・ロードスター級ならまったく問題はない。ただし、今までは買ってもVWゴルフやBMWセダンの人が、一足飛びにポルシェを越えて家が買えるほどのフェラーリやアストンマーティン級のスーパースポーツの購入を考えているとしたら、買えるだけのお金があったとしても「ちょっと待った」と言いたい。それは単純なクルマの購入では済まなくなるからだ。

当たり前のことだが購入のための諸経費だけでもかなりのもの。例えば現在3070万円のフェラーリ488GTBの場合、自動車税が6万6500円で自賠責が4万円ちょい。これはまだいい。それより本体価格に準じて取得税がイッキに上がって85万5900円!、任意保険も50万円オーバーは楽勝。つまり諸経費だけでフィットやVWアップが買えるのだ。

そのなんとも言えない金銭配分感に加え、普通、新型フェラーリを月極駐車場に駐車するなんて考えられない。盗難はもちろんイタズラの心配を考えると、屋内の防犯設備の整った駐車場が必要だ。新車のスーパーカーを買うということは事実上、屋内駐車場付きの持ち家が必須になる。

それだけじゃない。万が一ぶつけたとしたら。例えば488の場合、アルミボディなのでフェンダー交換だけで100万円オーバーは確実。もちろん車両保険に入っているのなら、ちょっとした自損事故でも保険で解決できるだろうが、そもそもフェラーリの車両保険金額を想像してみてほしい。

つまりなにを言いたいかというと、新車のフェラーリを買うということは当初の負担のみならず普段の維持費もケタ違いで、これが日常的にその人の金銭感覚をいたく刺激するのだ。断言するが、都心で飲んで郊外まで帰るのに、1万円程度のタクシー代をもったいないと考える人にそれはムリだ。例えるなら、普通に可愛くスーパーで数円でも安い野菜を求める倹約家の奥様と離婚して、金銭感覚のまるでないキレイな女優と再婚するようなものである。

始めはそれも嬉しいだろうが、私の知る限り、カードで1日数十万円の金を平気で使い、買い物を都心の成城石井だけで済ませる女性と本当に生活していける日本の男性は少ない。しかし超高級車と生活するのはそれに近いことなのだ。

昔、フェラーリを初めて購入した有名人が嘆いていた。「俺はクルマを大切にし過ぎた。フェラーリに負けた」と。一方、新型マクラーレンで十勝サーキットを全開にするのが趣味の不動産経営者は「走って全損にしても笑える余裕がないとね」とニヤっと笑った。

お金だけのハナシではない。この手のスーパーカーを自分のモノにするとは、とんでもない収入と金銭感覚、損得勘定を必要とするのだ。大抵の人は何とか買えたとしても〝単に持つだけ〟で終わるだろう。

しかし意外な副作用もある。彼らが一様にクチにするのは、普段の生活では出会えない人と親しくなれることだ。そのメンツは、俳優、アーティストはもちろん、大成功した医者、経営者、F1ドライバーなど多岐にわたる。彼らは普通ではない才能や感覚を持っている。その相手から同じ価値観を持つ友人として見られるのだ。そこでは、ひとクラス上のお付き合いができるはず。

しかし、ポンッと遺産や不動産などの収入が入っただけでこの手のクルマを買ったひとは、次第に話題について行けずにツラくなってくると思う。悦びやチャンスはもちろんあるが、同時に自分の器も赤裸々になってしまうのである。超高級車を購入するということは過酷な道を通り抜けた成功者たちの世界に足を一歩踏み入れることでもある。問題は果たしてその覚悟が本当にアナタにあるか! なのだ。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。

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