岡崎五朗のクルマで行きたい VOL.44 クルマ作りのプロ意識

トヨタ クラウン

賛否が分かれるデザインとエンジン

アヘッド 岡崎五朗 クルマ作りのプロ意識

新型クラウンのコンセプトは明快。ユーザーの若返りだ。3世代前のモデルで導入したスポーツグレードの「アスリート」によってクラウンユーザーの平均年齢はグンと下がった。しかし先々代、先代では再び平均年齢が上昇。それを食い止めるために打ち出したのが「アスリート」と「ロイヤル」の差別性を強く打ち出すという方針だ。アスリートの顔は驚くほど派手だが、これは確信犯。トヨタ自身も「賛否が分かれるのは覚悟の上」と主張している。ならば遠慮なく書かせてもらうが、僕は妙に幾何学的なアスリートの顔には否定的だ。たしかに目立つが、クラウンに相応しい品位が感じられない。

とはいえ、好調な初期受注を獲得しているところを見ると、トヨタの狙いはひとまず成功しているようだ。

ハードウェア面での注目ポイントは、2.5ℓ4気筒のハイブリッドが登場したこと。従来のハイブリッドは3.5ℓV6との組み合わせだったため、速いが肝心の燃費はいまひとつだった。その点、新型のハイブリッドはカタログ燃費を従来の14㎞/ℓから23.2㎞/ℓへと大幅に向上した。4気筒化に伴う価格の引き下げも加わり、クラウン全体のおよそ6割がハイブリッドだという。

仕上がりだが、正直なところ静粛性はクラウンに相応しいレベルには達していない。とくに上り勾配や急加速時にはウィーンという4気筒エンジンの騒音が耳につく。純粋にクラウンらしいスムースさ、静粛性を求めるなら、ハイブリッドより価格の安い2・5ℓV6を選ぶことをオススメする。

走りの基本性能は高い。とくにコーナリング時の安定感は間違いなくクラウン史上最高だ。しかし液晶を使ったタッチパネルの視認性やアイコンのデザインが垢抜けないこと、およそ高級車とは思えないトランクルーム内の雑な仕上げなど、課題はいくつか残されている。今後の改善に期待したい。

王冠をモチーフとした迫力あるフロントフェイスなど、新世代クラウンにふさわしい個性に満ちたスタイルを採用。先進のトヨタマルチオペレーションタッチを採用し“伝統と革新”が融合したモダンな室内空間を表現した。

車両本体価格:¥5,430,000(ハイブリッド アスリートG)
全長×全幅×全高(mm):4,895×1,800×1,450
車両総重量:1,955kg
乗車定員:5人
エンジン:直列4気筒DOHC
総排気量: 2,493cc
最高出力:131kW(178ps)/6,000rpm
最大トルク:221Nm(22.5kgm)/4,200〜4,800rpm
モーター:交流同期電動機
最高出力:105kW(143ps)/最大トルク:300Nm(30.6kgm)
JC08モード燃費:23.2km/ℓ
駆動方式:後輪駆動

メルセデス ベンツ Aクラス

ライバルたちに正面から挑む意欲作

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「生まれ変わった」。新型Aクラスはまさしくそんな表現が相応しい。メルセデス・ベンツのなかでもっとも小さいモデルであることとネーミング以外はすべて新しくなったと言ってもいいだろう。

それがもっとも明確に表れているのがスタイリングだ。スポーティーという形容詞とはほど遠かった従来の背高フォルムを捨て、低く構えたスピード感溢れるデザインを獲得。もはや先代のような実用車的イメージはかけらもない。メインターゲットは30代を中心とした若年層。これまでメルセデス・ベンツを「権威主義的」とか「オヤジ臭いブランド」として敬遠してきた人たちの取り込みを狙う。言い換えれば、BMWやアウディといった、非メルセデス的価値観を売り物にしてきたライバルたちに正面から挑む新世代メルセデスがAクラスというわけだ。メルセデスにとってはまったく新しい試みであり、アニメを使ったユニークなプロモーションもその一環。アニメなど以前のメルセデスではちょっと考えられなかったことである。

そんな新鮮なキャラクターをもつAクラスだが、乗ってみるとそこはやはりメルセデス。ハンドリングはダイレクト感を強調したスポーティーなものだが、強靱さと粘りとしなやかさを併せもつ乗り味はCクラス以上のFRメルセデスに通じるものがある。同じFFでありながら先代までのAクラスとは明らかに異なるメルセデス流の乗り味を身につけているのは嬉しいニュースだ。

ただし1.6ℓ直4直噴ターボは実用域のトルクがやや痩せているし、7速DCTのマッピングも日本の道路環境にマッチしていない部分がある。このあたりは今後の課題。動力性能を重視する人には2ℓターボを積む上位グレードの250シュポルトをオススメする。

284万円〜という戦略的な価格を含め、新型Aクラスはメルセデスをより身近な存在として意識させてくれる意欲作だ。

ワイド&ローフォルムにプロポーションを一新。大型フロントマスクやサイドのダイナミックなキャラクターラインなどにより、アグレッシブでスポーティなスタイリングを構成。インテリアは上質で、全モデルにヘッドレスト一体型スポーツシートを採用するなど洗練された空間になっている。

車両本体価格:¥2,840,000(A180 BlueEFFICIENCY)
全長×全幅×全高(mm):4,290×1,780×1,435
車両重量:1,430kg
乗車定員:5人
エンジン: DOHC 直列4気筒 ターボチャージャー付
総排気量:1,595cc
最高出力:90kW(122ps)/5,000rpm
最大トルク:200Nm(20.4kgm)/1,250〜4,000rpm
JC08モード燃費:15.9km/ℓ
駆動方式:前輪駆動

マツダ アテンザ

街中で楽しめるドライビングフィール

アヘッド 岡崎五朗 クルマ作りのプロ意識

マツダ車は日本よりも海外、とくにドイツで高く評価されている。アウトバーンを擁するドイツではクルマの底力が日常的に試されるため、とくにシャシー性能に手抜きは許されない。そんな過酷なマーケットで高い人気を誇る日本車がアテンザだ。

'02年に登場した初代から数えて3代目にあたる新型は、デビュー前から「史上最高のアテンザ」との呼び声が高かった。エンジン、サスペンション、ボディ骨格といった主要テクノロジーを一新したことに加え、革命的クリーンディーゼルエンジンであるスカイアクティブDを搭載。昨年発売したSUV「CX-5」のディーゼル比率は90%を超えているが、アテンザも初期受注の実に77%がディーゼルだという。セダン&ワゴンでこの数字は驚きである。

たしかに、スカイアクティブDは日本が世界に誇るべきエンジンだ。ディーゼルの常識を破る14対1という圧縮比を実現したことにより後処理装置なしで排ガス規制をクリア。加えてディーゼルの常識を破る軽快な吹け上がりも楽しませてくれる。もちろん、4ℓエンジン並みの豊かなトルクも素晴らしい。

しかし、アテンザの魅力はディーゼルエンジンだけじゃない。静粛性とスムースな回転フィールを重視してガソリンエンジンを選択したとしても、他のクルマではなかなか味わえない濃密なドライビング体験を味わえるのだ。そう書くと、自分は飛ばさないから走りなんて関係ない…と思う人もいるだろう。

もちろん、アテンザはアウトバーンを180㎞/hで安心して走れる性能が備わっている。ワインディングをスポーツカーのように疾走する実力もある。しかし、街中レベルの速度でも、あるいは普通の四つ角を曲がっただけでも「気持ちいい」と感じさせてくれる乗り味こそがいちばんのチャームポイント。クルマ好きだけでなく、クルマに興味を失いつつある人にこそ乗ってもらいたい。

新世代技術「SKYACTIV」と新デザインテーマ「魂動(こどう)」を採用したフラッグシップ。高い環境性能と力強く気持ちのよい走り、快適で上質な乗り味を実現している。インテリアは素材や触感、操作機器の形状にこだわり、上質でスポーティな雰囲気の中に機能性や快適性を融合している。

車両本体価格:¥3,400,000(セダン XD L Package)
全長×全幅×全高(mm):4,860×1,840×1,450
車両総重量:1,510kg
乗車定員:5人
エンジン: 水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ
総排気量: 2,188cc
最高出力:129kW(175ps)/4,500rpm
最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2,000rpm
JC08モード燃費:20.0km/ℓ
駆動方式:前輪駆動

マクラーレン MP4-12C

F1の名門が送り出す真のスーパーカー

アヘッド 岡崎五朗 クルマ作りのプロ意識

スポーツカーに「乗用車の終わるところに始まり、レーシングカーの始まるところに終わるクルマ」という古典的定義を当てはめるなら、マクラーレン以上にスポーツカー作りに相応しいブランドなどそうはない。とりわけスーパーカーと呼ばれる超高性能かつ高価なモデルにとって、モータースポーツとのつながりは必要不可欠。登場するやいなや世界中のエンスージアストがMP4-12Cに熱い視線を注ぐのは、卓越したパフォーマンスもさることながら、マクラーレンがモータースポーツの頂点であるF1でフェラーリに次ぐ優勝回数を誇る名門中の名門であることと大きく関係している。

 もちろんそこにはモータースポーツからの技術的フィードバックもあるにはあるが、それ以上に大きいのがブランド力だ。天才的ドライバーが高度なテクニックと不屈の精神力を駆使して操るF1マシンは見る者の魂を揺さぶり、そのオーラを投影した商品の魅力をさらに引きたたせる。そう、MP4-12Cは、F1のトップコンストラクターが手掛けたマシンであるという時点で、スーパーカー中のスーパーカーであることを約束されたも同然の存在なのである。

車体中央に搭載するのは625psを絞り出す3.8ℓV8ツインターボで、軽量カーボン製ボディをわずか3.1秒で100㎞/h、9秒で200㎞/hまで加速させ、状況さえ許せば328㎞/hという最高速を叩きだす。

一方、可変サスペンションを快適性重視モードにセットしておけば乗り心地は下手な乗用車を凌ぐほど快適。車線変更や駐車時もこの種のクルマにありがちな斜め後方視界の悪さに悩まされることはない。扱いやすいデュアルクラッチ式トランスミッションを含め、痺れるようなパフォーマンスをもつスーパーカーとしては望外に乗りやすい。価格は2790万円。非現実的な数字だが、ときにはこうしたクルマに夢を馳せてみるのも悪くない。

強靭で軽量なカーボンモノコックを採用。革新的な互いに連動するサスペンションシステムを組み合わせて俊敏なハンドリングと驚異的なロードホールディング性を両立。パワフルかつ扱いやすいV8ツインターボエンジンにはデュアルクラッチシステムを用いたギヤボックスが装備されている。

車両本体価格:¥27,900,000
全長×全幅×全高(mm):4,507×1,909×1,199
車両重量:1,336kg
乗車定員:2人
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3,799cc
最高出力:441kW(600ps)/7,000rpm
最大トルク:600Nm(61.2kgm)/3,000〜7,000rpm
駆動方式:後輪駆動

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text:岡崎五朗/Goro Okazaki
1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイトなどで活躍。テレビ神奈川の自動車情報番組『クルマでいこう!』に出演中。

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