ロングセラーの継承者 アイメトリクス「コリント」

アヘッド ロングセラーの継承者  アイメトリクス「コリント」

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ロングセラー商品となる秘訣は、時代の好みに合わせ少しずつ変化させていくことだ、と聞いたことがある。「昔と全く同じ」などと思っている定番品でも、原点はそのままに、味付けやパッケージなどを気付かないほどのさじ加減で変えているから、時代を超えて愛され続ける存在になるのだという。

text: 村上智子 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.138 2014年5月号]
アイメトリクスの伝統的ロングセラー商品と、それを受け継ぐ新製品の開発ストーリーを聞いていくうちに、そんなことを思い出した。

機能性や掛け心地に深く拘ったオーダーメイド・メガネを手掛けているアイメトリクスにとっての原点は、1980年代後半に発売を開始したモデル「スタンダード」。金属を一切使わない代わりに、軽さと弾力性を持つウルテムという特殊プラスチック(樹脂)を採用しており、とにかく軽くて掛け心地がいい。流行に左右されないシンプルなフレームデザインも永く愛される理由で、今も現役でパーツが作り続けられている。

ファッション要素も求められるメガネという世界にありながら、登場以来ブレることのない姿勢を貫いているだけに、「コレしかつけない!」というコアなファンが多いモデルだそうだ。

ところが先月、アイメトリクスはこの「スタンダード」の継承者と位置付けたモデル「コリント」を発売した。25年以上もの歴史を持つロングセラー商品に、なぜあえて継承品を出したのだろう?

アイメトリクスでは、より多くの嗜好やニーズに応えようと、これまでもスタンダード以外の様々なバリエーションのモデルを開発してきた。中でも積極的に取り組んできたのが、フレームにマグネシウムやアルミニウムなどの金属を用いた〝ハイブリッド型〟と呼ばれる製品。金属を用いることで、強度を保ちつつデザイン性の幅を広げ、曲線美を意識したものや、面体と直線に拘ったものなど、ファッション性の高いメガネを展開してきた。ところが、ユーザーのおよそ8割がこうしたメガネを選ぶ一方、長年の愛用者からは徐々にこんな声が出始めた。

「『(スタンダードの)樹脂フレームは、ハイブリッド型よりはどうしても脆いので、長年使っていくにはもう少し強度が欲しい。でも、ほかに欲しいモデルがない』との声をいただくようになったんです。スタンダード一筋のお客様は、シンプルで軽い点を気に入っていただいていたのですが、ほかを選ぼうにも、ボリュームがありすぎたり派手に感じたりと、乖離したモデルしかなかったんですね」(末次正義社長)

敢えてラインアップを充実させてきたことが、皮肉にもロングセラー商品との溝を招く結果となってしまった。このことが心に引っ掛かかり「もう一度、出発点でもある商品に〝原点回帰〟しよう」と思い至ったという。

とはいえ、目指したのは過去に帰ることではなく、スタンダードという製品の原点に立ち戻りつつ、今のユーザーが求めている新しいスタンダードを追求すること。伝統を継承しつつ、新たなエッセンスも取り入れた商品開発だ。

具体的には、強度を向上させつつ、従来のイメージを損なわないようなスリムでシンプルなスタイルに仕上げたい。このため、ブリッジやヒンジ部分にはアルミニウムを使うことにした。

そこで用意したのが、直線的でカクカクしたボリュームのあるモデル「スパルタン」だ。スタンダードとは対極を成す、攻めたデザインだが、レンズとの接触面が太く強度がある。この実寸5倍サイズのモックアップ(精密に再現した造型)を製作し、それをベースに職人が手作業で削っていきながら、新たなスタンダードにふさわしいディティールを探っていったのだという。

実際に使われたモックアップを見せてもらった。「クルマのボディコンセプトではないですが、角はRでまとめようと決めていたので、それをどのように出していくかに苦労しました」との言葉と、部品に直接書き込まれた細かなメモから、試行錯誤の様子がうかがえる。

アイメトリクス社の得意技でもある3次元CAD技術を持ってすれば、パソコン上でもモノづくりができてしまう時代に、あえて人間の手や感覚を大切にし、手間隙を惜しまない姿勢から生まれた「コリント」。正面から見ると、細身で上品な印象ながら、レンズを支えるパーツの接触部分はスパルタンと同じ面積、つまりレンズをしっかりと支えていることが分かる。

実際には、スタンダードに比べてフレームの厚さは1.25倍、強度は2〜3倍アップしたそうだ。実験によると、スタンダードでは4㎏の重みで潰れていたところ、コリントでは10㎏くらいの重みまで耐えられるようになった。レンズを除くと重さはわずか6g。〝体重〟は、同社のハイブリッドタイプの中で一番軽い商品に仕上がっている。

原点に立ち戻りながら、時代に合わせて進化したコリントは、新たなロングセラーとなるかもしれない。


色は、チェリー、ガンメタルなど落ち着いたトーンの5色をラインアップ。フレーム価格は¥36,000(税抜)。全国のアイメトリクス特約店で購入できる。
www.eyemetrics.co.jp/store
「スパルタン」のモックアップ(左上)をプロダクトデザイナーが紙ヤスリを手に形を確かめながら、理想のカタチ(右上)に仕上げていった。書き込まれた赤字に格闘の跡が滲む。
“コリント”とは、古代ギリシャにおける三大建築様式のひとつ。柱本体は細く、柱頭は葉が伸び広がり梁を支えているのが特徴。この形状をヒントに、「スリムでセクシーなデザインながらも、レンズを支える部分はしっかりとした太さと強度を持つ」というイメージを導いた。
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