岡崎五朗のクルマでいきたい VOL.66 トヨタのしめす水素ワールド

VOL.66 トヨタのしめす水素ワールド

アヘッド 岡崎五朗のクルマでいきたい

ミライの航続距離は650㎞。水素の充填時間はわずか3分。航続距離と充電時間というEVの弱点をことごとく潰しつつ、走行段階で二酸化炭素をまったく排出しない。FCV(燃料電池車)が「夢のクルマ」と言われる所以だが、かつては1台1億円とも2億円とも言われていた。それを723・6万円に抑えたのは本当にスゴいことだ。もちろん、トヨタとてミライで儲けようとは思っていないだろうが、それにしてもこの価格は衝撃的だ。FCV普及の障害になるだろうと考えていた白金の使用量についても、ミライで使っている燃料電池スタックでは削減が進み、今後さらに減らしていける目処がついているという。

しかし、それ以上に画期的なのが「市販」という事実そのものだと僕は思う。実験車ならトラブルが頻発しても許されるが、市販車には高度な信頼性が求められる。トヨタが市販に踏み切ったというのは、信頼性に自信ありということを意味する。

水素ステーションの普及に代表される課題はある。しかし、FCVが存在しなければ水素ステーションをつくっても意味がないわけで、ミライの登場が水素インフラ整備を加速化させるきっかけとなるのは間違いない。さしあたって2015年内に100カ所、2025年には1000カ所の商用水素ステーション建設が見込まれている。

水素の製造、運搬、貯蔵、供給段階でも二酸化炭素を排出するじゃないか。そんな声もある。たしかにそうだ。けれどエネルギーの多様化はエネルギー問題のリスクを減らす。内燃機関のブラッシュアップも、EVのさらなる増加も、FCVの普及も、どれも一様に国家エネルギー戦略の重要なピースなのである。そして冒頭で書いたワクワク感。人の心を動かすことも非常に大切なことだと思うのだ。

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