「免許証の裏」に込めた意思

「免許証の裏」に込めた意思

アヘッド 臓器提供

命とは期間限定のものであり、生き物は生まれた瞬間から死ぬことが決まっている。生と死は常にセット。人生とは死へと一歩一歩向かっていく過程だ。

けれど、医学が発達し、戦争もない平和な日本に暮らしていると、生きているのが当たり前に思えてくる。

若年層のほうが死ぬ確率が低いだけで、実際は僕も、僕の子供も、昨日どこかで生まれたばかりの赤ちゃんだって、明日生きているかどうかはわからない。ならば生きているうちに死後のことを考えておくのは決して悪いアイディアではないだろう。

そんななか、もっとも手軽に実行できるのが、自分が死んだときの臓器提供に関する意思表示だ。平成22年7月以降に発行された運転免許証の裏面には臓器提供に関する意思表示欄がある。

健康保険証にも意思表示欄を設けたものが増えている。いずれにも該当しない場合は、インターネットや公共機関、コンビニ等で意思表示カードやシールが入手できる。これらを使って、まずは意思表示をしておくことをおすすめしたい。

誤解のないようにいっておくと、僕は決して臓器提供を勧めているわけじゃない。世の中には臓器提供を待ち望んでいる人がたくさんいる。臓器提供によって助かる人がいる。涙を流して喜んでくれる人がいる。死の淵から生還して笑顔になれる人がいる。

けれど、自分の臓器を提供することに抵抗をおぼえる人の気持ちも理解できる。臓器を提供するかしないかは善悪の問題ではなく、貴方の考え方、価値観次第。提供を拒否したって誰にも責める権利などない。

ただ、2010年の改正臓器移植法の施行により、本人が生前に意思表示をしていない場合、脳死と心停止のどちらを死とするかという「死の定義」と、臓器移植の可否は遺族に委ねられることになった。

家族にそんな重くて難しくて辛い判断を押しつけたくない一心で、僕は運転免許証の意思表示欄に自分の意思を書き込み、母にも勧めた。

臓器提供の意思表示とは

公益社団法人 日本臓器移植ネットワークによると、意思表示には大きく分けて以下3つの方法がある。

1.インターネットでの登録(www.jotnw.or.jp)
2.保険証・運転免許証の意思表示欄への記入
3.意思表示カードやシールへの記入

現実的に考えれば、2が最も身近な方法だろう。一度免許証の裏を見てほしい。

「臓器を提供する」以外にも、「提供しない」という意思や、提供したくない臓器の選択、親族優先といった特記事項など自分の考えを書き込むことができる。記入は任意。気持ちが変わった場合は、いつでも書き直しが可能だ。ちなみに、同法人で臓器提供を待ち望む患者登録数は、13,713人にのぼっている(2014年1月末時点)。

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text:岡崎五朗/Goro Okazaki
1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイトなどで活躍。テレビ神奈川の自動車情報番組『クルマでいこう!』に出演中。

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