伝統の排気量を復活させた意味 ドゥカティ 899 パニガーレ

アヘッド ドゥカティ 899 パニガーレ

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他に類を見ない個性的なスタイルで注目を集めるドゥカティのフラッグシップモデル「1199パニガーレ」の兄弟車である「899パニガーレ」が日本に導入されることになった。

text:神尾 成  photo:渕本智信  [aheadアーカイブス vol.136 2014年3月号]
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伝統の排気量を復活させた意味 ドゥカティ 899 パニガーレ

伝統の排気量を復活させた意味 ドゥカティ 899 パニガーレ

一見するとスウィングアームが方持ち式から両側支持に変更されたことや、名称が示すように排気量が下げられたこと以外に「1199パニガーレ」と大きく違う部分は無いように思える。しかし「899パニガーレ」が「1199パニガーレ」と最も異なっているのは、その存在意義だった。

そもそも「1199パニガーレ」は、「スーパーバイク世界選手権」を始めとするレースで勝利するためのレースベース車両として開発された経緯がある。それに対して「899パニガーレ」は、主だったレースのレギュレーションを鑑みてもレース参戦には不向きな排気量であることから、基本的にレースとは無関係に開発されているのが特徴だ。

そのせいか、前作の「ドゥカティ848」以降、このレンジのドゥカティのスーパースポーツは、後にステップアップするための入門用として見られることが多い。しかし今回の「899パニガーレ」は、〝ステップダウン〟してくる玄人好みのモデルに仕上がっていた。
実際に「899パニガーレ」を試乗してみると、ビッグツイン固有のパルス感が適度に薄められ、回り込んだ低速コーナーの立ち上がりでは、「1199パニガーレ」よりもアクセルを開け易くポジティブに攻め込むことができる。

それはライバルより少しでも速くという緊張感を伴ったものではなく、ライダーが恐怖感を抱かずに、確実に加速体制に移れるように味付けされているのだ。また排気量が減少した分、エンジン回転の上下動も軽く感じられるので、実際の重量差以上に軽快感が増している。

それに加え、キャスター角を0・5度立たせたというジオメトリーの変更や、リアタイヤのサイズを180/60サイズにしたこと、熟成の域に入ったDTC(ドゥカティトラクションコントロール)等もこの〝ファンライド〟にひと役買っていたのだ。

レース屋のドゥカティが、レース参戦という枠から外れて、ドゥカティ流の「ライディングプレジャー」を追求した結果、生まれたスーパースポーツが「899パニガーレ」ということなのだろう。

一般的にスーパースポーツを買おうとする場合、「どうせ高いお金を出すなら」と、レースに直結したトップエンドの最高峰モデルを選びがちだが、「899パニガーレ」は、その風潮にアンチテーゼしているように思える。オートバイのタイプにもよるが、排気量やスペックの呪縛から解放された先に本質的な歓びは存在するはず。

まして危険を切り離せないスポーツライディングという遊びに見栄は禁物である。酸いも甘いも噛み分けて来た良識あるライダーにこそ「899パニガーレ」を試してもらいたい。
Ducati 899 Panigale
車両本体価格:¥1,860,000
シート高:830㎜
車両重量:197kg(燃料と油脂類すべてを含む)
ボア×ストローク=100×57.2㎜
キャスター角:24°
トレール:96㎜
タイヤ:
フロント ピレリ製ディアブロ・ロッソ・コルサ 120/70 ZR17
リア ピレリ製ディアブロ・ロッソ・コルサ 180/60 ZR17
フレーム:アルミニウム製モノコックフレーム
エンジン:スーパークアドロ L型2気筒 4バルブ デスモドロミック 水冷
排気量:898cc
最高出力:87kW(118hp)/8,500rpm(日本仕様)
最大トルク:98Nm(10.0kgm)/8,500rpm(日本仕様)

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text:神尾 成/Sei Kamio 
1964年生まれ。神戸市出身。新聞社のプレスライダー、大型バイク用品店の開発、アフターバイクパーツの企画開発、カスタムバイクのセットアップ等に携わり、2010年3月号から2017年1月号に渡りahead編集長を務めた。現在もプランナーとしてaheadに関わっている。
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