ロードスター メディア対抗4時間耐久レース 二輪レーサーが挑む初めての四輪レース

アヘッド メディア対抗4時間耐久レース

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2輪が感覚的で時に勢いも必要とするフィジカルな乗り物だとすれば、4輪は理性的でどちらかと言えば多くの場面で我慢を求められるメンタルの乗り物。もちろん速さを突き詰めていけばそれらがどんどんクロスオーバーしていくはずだが、初めて4輪のレースを経験した日、そんな風なことを思っていた。

text:伊丹孝裕 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.155 2015年10月号]
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ロードスター メディア対抗4時間耐久レース 二輪レーサーが挑む初めての四輪レース

ロードスター メディア対抗4時間耐久レース 二輪レーサーが挑む初めての四輪レース

▶︎ロードスター メディア対抗4時間耐久レース」は、普段クルマを取材する側の編集者やジャーナリストがチームを組み、ドライバーとなって闘う耐久レース。ロードスターによるワンメイクレースで、初代ロードスターが発売された1989年から毎年1回のペースで開催、今年で26回目を迎える。今大会からはレース車両として4代目新型ロードスターが登場。各チームとも蓄積データがない中、いかに燃費をコントロールするかが勝負の決め手となった。


その気になればどこでも何度でも仕掛けられる2輪と違い、4輪はすぐ目の前に抜くべき相手がいるのに、それがなかなか近づいてこない。数ラップを費やし、じっくりと確実にその差を削り取りながら「ここしかない!」というポイントを見定めてインに飛び込む根気の果ての勝負だった。

最初はそれがずいぶんもどかしかったものの、思い描いたプラン通りにパッシングできた時の爽快さと、ちょっとしたミスでそれまでの数ラップすべてが無駄になった時のイラ立ちを経験し、4輪レースがいかに緻密な組み立てと駆け引きの上に成り立っているのかを知った。

それは外から眺めているだけではわからなかったもので、今さらながら「4輪っておもしろい」と感じている。
毎年筑波サーキットで開催されている「メディア対抗ロードスター4時間耐久レース」に今回初めて出ることになった。4輪はまったくの門外漢だったがそのために国内Aライセンスを取得してヘルメットやスーツを用意。

さらには今年から義務づけになったHANSも購入するというひとつひとつが新鮮で、道具が揃うにつれてレーシングドライバー気分も高まっていくのはとても楽しいものだった。

ドライバーは期せずして2輪になんらかの関わりを持つ面子が揃い、僕と丸山 浩さんは現役のレーシングライダーで、佐野新世さんはスーパーモタードやパリ・ダカールラリーの参戦経験もあるダート系のスペシャリスト。そして4輪ジャーナリストとしてお馴染みの岡崎五朗さんは学生時代にかなりモトクロスに熱中していたという経歴を持つ。

4輪に関しては僕だけが完全なシロートだったがひょんなことでスタートドライバーを務めることになったため、とにかく何事も起こさず自分のスティントを終えることだけを意識しながらスタートを待ったのだ。

とはいえ、それなりに緊張していた。なにせこのレースの規定であるローリングスタートの経験などなく、4点式シートベルトとHANSで体がガッチリ固定され、身動きが取れないドライビングポジションも不安をあおった。

それを多少緩和してくれたのが2輪レースでは禁止されている無線(携帯電話による通信)がOKだったことで、走行中は神尾編集長とのやり取りを通し、常にレースの流れと自分の状況が把握できたことはよかった。
スタート前、「1台抜けば落ち着くから大丈夫」と言われていたがそれは本当にその通りで、予選19番グリッドから徐々にポジションをアップ。36ラップを終えてピットインした時には早めに1回目のドライバー交代を行ったチームが多かったこともあって5位まで浮上していたのだ。

後は任せて安心のプロ達である。2番手の佐野さんに交代し、レース開始から1時間を過ぎた頃には1位に躍り出ることに成功。そして丸山さん、岡崎さん、そして最後は再び丸山さんとすべてのドライバー交代とピット作業が滞りなく進み、チェッカーまであと40分という終盤に差し掛かってもまだ1位をキープしていたのである。

ところが、「もしかしてこのまま優勝!?」とピット内がソワソワし始めた頃、状況が急速に悪化。なぜならそのままのペースではガソリンが足りなくなるのが明らかになり、一気にペースダウンを余儀なくされたのだ。

そんな中、燃費計算を担当したピットクルーが抜群の判断力を発揮し、臨機応変に対応。ガス欠にならないギリギリの回転数を常に計算し、その上限を指示しながら車両をゴールへと導いてくれた。
結果はチーム史上最高の5位でチェッカー。順位の浮き沈みや終盤のペース配分に一喜一憂しながらもチームの雰囲気がどんどん高まっていく様は耐久レースならではのもので、心地いい時間を共有できたメンバー全員に感謝したい。

今回、4輪レースの醍醐味を味わうことはできたが、4輪をドライブすることの達成感はまだかなり遠くにあることが分かった。その世界の一端を知ってしまった以上、もっと奥深いところを見てみたいと思っている。

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伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。
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