自動車開発とダイソンの共通点

アヘッド ダイソン

※この記事には広告が含まれます

ダイソンの掃除機と聞くと「吸引力の変わらない~」というフレーズが思い浮かぶが、クルマ好きを吸い寄せるパーツが隠れている。吸引力を生み出すインペラーだ。

text:世良耕太 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.131 2013年10月号]
Chapter
自動車開発とダイソンの共通点

自動車開発とダイソンの共通点

自動車のターボチャージャーで吸気を圧縮する羽根車をインペラーと呼ぶ。掃除機の心臓部にあって、強力な吸引力を発生させるパーツもやはりインペラーだ。

自動車用ターボのインペラーは金属製なのに対し、ダイソンの掃除機に収まるインペラーは樹脂製という違いはあるものの、形状はそっくりである。どちらも、空気を効率良く送り出すのが目的で、緻密な設計と製造精度の高さが求められる点は同じ。普段は隠れて見えないが、機能美すら感じるパーツだ。

ダイソンが9月13日に発売したコードレス掃除機の新製品「DC62」は、エンジンの形式を思い浮かべてしまいそうな「V6」と呼ぶ新型モーターを搭載する。このモーターは毎分最高11万回転し、1秒間に15リッターの空気を取り込む。

従来機種以上の吸引力を発生させるためモーターの出力を1.5倍、350Wに向上させた。バッテリーの容量が同じなら稼動時間は短くなってしまうが、ニッケルマンガンコバルトバッテリーを再設計することで、同等のサイズながら容量を高めることに成功し、1充電あたり約26分の稼動時間を確保した。
▶︎心臓部である右上の本体に、各アタッチメントを装着して使用。普段は右下の専用ブラケットに立て掛けておけば、収納しながら充電ができる。


ダイソンはDC62を開発するにあたり、日本の家庭でどのように掃除が行われているか、調査した。その結果、普通の掃除機でも約87%が20分以下で掃除を終えているというデータを得た。

DC62はトリガーがオン/オフスイッチになっている。通常のオン/オフスイッチの場合はいったんオンにすると、掃除したい場所から次の場所に移動するときもモーターを駆動したままになりがちで、そのぶん電力を消費してしまう。

DC62の場合はトリガーがグリップに付いている。ゴミやホコリを吸引したいその瞬間だけトリガーを引けばよく、電力の節約になる。このトリガーもやはり、入念なリサーチによって改良が加えられた。「繰り返し操作をすると疲れる」という従来型ユーザーの声を反映し、わずかな力で操作できるようにした。
▶︎従来より径の小さな15個のサイクロンを搭載することで、より微細なゴミも集塵。吸引力を高めるため、左のモーター部分内蔵のインペラーを大型化した。


そのトリガーを引くと、ダイソン・デジタルモーターV6は瞬時に起動し、高い吸引力を発揮する。

「1秒足らずで11万回転に達するんだ」と説明してくれたのは、モーター開発責任者のエイドリアーノ・ニロ氏だ。ターボの開発課題はアクセルペダルを踏んでから駆動力が盛り上がるまでの応答遅れ、すなわちターボラグにあるが、瞬発力が求められるのは掃除機も同じ。DC62のインペラーが樹脂製なのは軽さを重視したから。その樹脂も特殊。

軽ければいいというものではない。なにしろ、毎分11万回転、1秒間に1833回転するからだ。

「高速で回転するとインペラーに大きな力が掛かる。力が掛かって変形すると空力特性(すなわち吸引力)に悪影響を与えるので、強度の高い材料を使う必要がある。DC62のV6モーターが使っているのはカーボンを配合したPEEK材(ポリエーテル・エーテル・ケトン)。スタート/ストップを繰り返しても耐えられる高い疲労強度を備えている」
▶︎アルミパイプを省略すればハンディクリーナーに。コードレスのため、車内の掃除にも使いやすい。


説明を聞けば聞くほど、自動車用ターボの開発と共通項の多さに驚く。ダイソンは週に150万ポンド(約2億3700万円)を投じるほど、技術開発に熱心な企業だ。

「確かに、ターボに求められる特性に似ているね」とニロ氏。「サイズは小さいが、とても高い圧力を素早く立ち上げる必要があるところなどが共通している。実際、ダイソンには自動車産業でターボの開発に携わったエンジニアもいるんだ」

付属のパイプを省略してノズルやツールを装着すれば、DC62は車内を掃除するのに打ってつけの掃除機となる。軽いだけでなく重心に気を配った設計のため、小まめに動かしても疲れにくいのはありがたい。インペラーの設計を含め、高度なスペックはすべて、使いやすさを高めるため、なのを実感する。


●Dyson Digital Slim™ DC62
モーターヘッドシリーズ

サブではなくメインで使えるコードレス掃除機。その性能は、一般的なコード付き掃除機の集塵力を上回るという。付属ツール数の異なる、3機種が用意されている。ページの写真は4種類のツールが付属している標準モデルの「DC62モーターヘッド」。

価格:¥69,800〜
幅×奥行き×高さ(mm):211×1,180×208
本体質量:1.22kg
URL:www.dyson.co.jp
お問い合わせ(話そうダイソンお客様相談室):TEL.0120(295)731

-----------------------------------
text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細