ボディカラーの秘密 三菱ミラージュ

ボディカラーの秘密 三菱ミラージュ

アヘッド ボディカラーの秘密 三菱ミラージュ

また女性は、化粧品や洋服などで日常的に色を選ぶことを繰り返して生きている。極端に言えば、選んだ色によって、その女性のアイデンティティが形成されているようなもの。

だから、色を選ぶことのできないクルマは、自分とは遠い存在に感じてしまう。でもひとたび好きな色を見つければ、そのクルマとの距離は一気に縮まり、満足度もアップする。女性と色との関係は、男性の予想を遥かに超える親密度だ。

三菱の新型コンパクトカー『ミラージュ』は、開発当初から女性ユーザーをメインターゲットと位置づけていた。だからボディカラーの選定は、大きな鍵を握る要素である。女性がパッと見た時に、カラフルだな、いろんな色が揃っているな、と印象づけられるラインアップにしなくてはならない。

そう感じたデザイン本部・カラー担当の安井智草さんは、早い段階から準備を始め、それまでの三菱車とはまったく異なるアプローチでカラーデザインを進めていったという。

「最初に気がついたのは、同僚の奥様のひと言がきっかけでした。三菱のモデルはそれまで、道路がボディに映り込むような下向きの形状が多く、アスファルトのグレーがボディカラーに混ざり合っているように見えると。なるほどそれでは、女性が魅力を感じるような鮮やかなボディカラーにはなりにくいわけです。そこで今回は、デザインを始める時に一緒にボディカラーも考え始めて、なるべく太陽の光を映し込むような形状をリクエストしました。ボディカラーが映えるようなデザインを、一緒に作りあげていくことにしたのです」。

確かにミラージュは、改めて見ると空に向かうようなラインが多いことに気づく。

デザインチームでそうした取り組みを行う一方で、商品企画を担当するグローバルスモールプロジェクト推進本部の黒畑あゆみさんは、もうひとつの壁を痛感していた。

「商品化するには社内でまずプレゼンをするプロセスがあるのですが、女性同士で話をしていれば通じる感覚が、男性の上司にはなかなか理解してもらえないのです。どうして女性ユーザーには色が大切なのか、どうしてこの色合いに決めたのか。感覚だけで納得してもらうのは難しいので、ひとつひとつ、データや理論などに置き換えていく必要がありました。それがとても苦労した点です」。

アヘッド ボディカラーの秘密

最も物議を醸し出したのは、日本専用色として採用したカシスパープルメタリックだった。なぜピンクではなくパープルなのか、どうしてネーミングにカシスを入れるのか。

本音を言えばデザイナーとしての「この色はいける」という直感が大きかったが、それもしっかりとデータ化してプレゼンに臨んだのだと安井さん。

「こんな色を誰が買うの? 本当に女性はこんな色が好きなの? などと反対意見を言われると、確かに不安がまったくなかったわけではありません。でもそこはもう、賭けのようなものでした」。

そして黒畑さんは、またしても新しい試みを実行に移した。上司だけでなく、お客様と直接触れ合う販売店の現場も、ほとんどが男性であることを危惧し、セールスマン向けの販売マニュアルにも色の大切さ、それぞれの色に込めた想いなどを詳細に記したのである。

「以前、お客様のアンケートで、気に入った色があったのに、納車が遅くなるからと他の色を薦められて悲しい思いをしたという女性がいらっしゃいました。そうした女性の気持ちを、男性スタッフに理解して欲しかったですし、ミラージュがこだわったせっかくのカラーを、お客様にもしっかり伝えて欲しかったのです」。

こうして完成した『ミラージュ』のラインアップはとてもカラフルで、たくさんの色が揃っている印象を受ける。実際には8色構成なので、『ヴィッツ』の17色などに比べると少ないのだが、「どうやったら数が少なくてもカラフルに見えるかを研究したんです。店頭やイベント会場などでミラージュを並べる順番なども、しっかり指示しているんですよ」。

と安井さん。しかしその効果は絶大だったようだ。販売開始1ヶ月で集計したデータでは、シルバー、ホワイト、ブラックの売れ筋御三家がトップ3を占めてはいるが、セルリアンブルーマイカが14%、レッドメタリックとカシスパープルメタリックが共に9%と、有彩色が大健闘。

さらに、女性ユーザーだけに限定したデータでは、有彩色を選ぶ割合がグンと高くなる。これは過去の三菱車と比べると異例のことだ。

女性が女性のことを真剣に考えて開発すると、もっともっとクルマは女性にとって魅力的になる。『ミラージュ』をもってそれを証明した安井さん、黒畑さんの笑顔は、そんな未来を感じさせてくれたのだった。

アヘッド 三菱ミラージュ

三菱ミラージュ
価格:¥998,000〜¥1,288,000
低燃費、低価格、扱いやすさをキーワードに開発されたコンパクトカー。「どうしたら女性ユーザーの支持を得られるか」を念頭に、開発当初から社内の女性陣が情熱を持って関わってきた。
http://www.mitsubishi-motors.co.jp/mirage/

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。

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