復活した"東京"モーターショーに見るブランド戦国時代

復活した"東京"モーターショーに見るブランド戦国時代

80万という数字にこだわった理由

アヘッド 東京モーターショー

なぜ入場者数にこだわったのか?それには伏線があった。リーマンショック後に開催された前回の東京モーターショーの入場者数は、多くの輸入車勢が出展を取りやめたこともあり過去最低の61万人にとどまった。このままでは自動車業界の地盤沈下がさらに進んでしまう…そんな危機感が主催者側にあったのは容易に想像できる。

危機感を抱いていたのは主催者だけではない。われわれ自動車メディアもクルマ離れをなんとか食い止めようと、できる限りの努力をした。雑誌、ブログ、フェイスブック、ツイッター、USTREAMといったメディアを総動員した事前告知に加え、僕が所属するAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)は、ショー期間中会員を総動員し、見どころを解説しながら来場者と会場を巡るガイドツアーを実施。屋外の特設コースでの同乗試乗会も受け持った。さらに、時間の許す限り、シンポジウムやトークショーにも参加した。

これらの行動によって来場者数の上乗せに多少の貢献はできたと思うし、何より来場した方には満足していただけたと自負している。

意気込みが伝わった輸入車 翻って、国産車ブースは…

アヘッド 東京モーターショー

輸入車メーカーも頑張っていた。本社の手厚いバックアップがあったVWグループなどは「これぞ国際モーターショーだ!」といった煌びやかなブースを設営。世界初登場モデルも複数持ち込んだ。一方、ジャガー・ランドローバーやプジョー・シトロエンは十分な本社バックアップを受けられなかったものの、日本法人が持つ限られた予算をやりくりして見事なブースを作り上げていた。

もちろん、モーターショーの来場者数が増えたからといって、それが即クルマ離れを食い止めることにつながるわけじゃない。そんなことは百も承知しているが「このまま手をこまねいているわけにはいかない」「自分たちがやれることはやる!」という強い想いが、多くの人々を突き動かした。震災からの復興途上にあることも、そんな想いを強くさせた理由のひとつだろう。

結果、来場者数は対前回比約4割アップの84万人。長引く不況、超円高、反対の多いTPP/FTAなど、日本の自動車ビジネスには解決すべき数多くの難問が山積しているが、ひとまず努力は報われた。

アヘッド 東京モーターショー

その一方、展示ブースを見ていて「果たして国産メーカーは本当の意味での危機感を持っているのだろうか?」という疑問を抱いたのも事実である。

クルマの本質的な魅力である運転の楽しさを追求した「86」や「BRZ」は大きな注目を集めていたし、EVやプラグインハイブリッド、燃料電池車といった未来志向の環境技術展示も充実していた。デザイン面でも、スズキの「レジーナ」やマツダの「タケリ」、ホンダの「Nコンセプト4」といった興味深いモデルが揃っていた。個々のモデルの出来映えは決して悪くなかったのだ。

しかし、視線を引いて全体を眺めると、どこか華やかさに欠けるブースが多かったのも事実。とくにドラえもんを前面に押し出したトヨタのブースは、平面的な構造や薄っぺらい床材をはじめ、いかにも低予算でつくりました感が滲み出ていた。

お隣のレクサスブースに関してもそれは同じ。安普請な造作と、明らかに照度不足のライティングのせいで、国内初お目見えとなる新型GSもかすんで見えてしまっていた。あれならショールームの方がよっぽど立派だ。今回屈指の出来映えだったアウディのブースと比較すると、1レベルどころか2レベルも3レベルも劣っていたと言わざるを得ない。

モーターショーで表現すべきこと

アヘッド 東京モーターショー

モーターショーのブースとは、クルマや技術を見せる場所である以前に、メーカーの勢いやブランドイメージを表現する場所であるべき、というのが僕の持論だ。ましてや今回は自動車業界全体が背水の陣で臨んだモーターショー。しかも地元開催なのだから、なおさらショールーム以下の出来映えでお茶を濁しているようでは困る。

トヨタに限らず、どの国産メーカーも口を揃えて「予算がなくて…」と言い訳をしていたが、数十分の1、数百分の1の台数しか売っていない輸入車メーカーがあれだけ強烈なアピールをしていたことを考えれば、「予算がなかった」ではなく「予算をとらなかった」というのが真相である。

おそらく国産メーカーはモーターショーを「販売促進の場」と考えているのだろう。となれば、たかだか80万人程度の来場数のために多くの予算を割くのは非効率だと判断するのが道理である。けれどそれは間違いで、全世界から多くのプレスが取材に訪れるモーターショーとは、ブランドイメージや技術戦略、商品戦略、ひいては開催国の元気ぶりを内外に発信する絶好の機会でもある。

だからこそ、多くの人がなんとか東京モーターショーを盛り上げようと努力をした。しかしそれは結局、国産メーカーとの温度差を実感させる結果になってしまったようだ。次回の東京モーターショーは2年後の2013年に開催される。次こそは、震災から完全復活した元気な日本の姿を全世界に発信して欲しい。


-----------------------------------------
text:岡崎五朗/Goro Okazaki
1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイトなどで活躍。テレビ神奈川の自動車情報番組『クルマでいこう!』に出演中。

アヘッド ロゴ

この記事をシェアする

最新記事

     
アヘッド Car & Motorcycle Magagine ahead archives