埋もれちゃいけない名車たち VOL.22 少年に夢見させた国産スポーツモデル「マツダ サバンナRX−7」
今回の巻頭特集のテーマは〝原点回帰〟だと聞いた。途端に頭の中がタイムスリップをする。いとも容易くひとつのキーワードに辿り着く。ちょうど50歳前後のクルマ好きにとってのひとつの大きな原点となるのは、間違いなく第1期スーパーカー・ブームだったはずだからだ。
text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.138 2014年5月号]
今回の巻頭特集のテーマは〝原点回帰〟だと聞いた。途端に頭の中がタイムスリップをする。いとも容易くひとつのキーワードに辿り着く。ちょうど50歳前後のクルマ好きにとってのひとつの大きな原点となるのは、間違いなく第1期スーパーカー・ブームだったはずだからだ。
text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.138 2014年5月号]
▶︎サバンナRX-7は、1978年3月、輸出名がRX-3だったサバンナの後継モデルとして発表された。どちらかといえばズングリしていたRX-3の真逆をいく低くクリーンなスタイリング、そしてスーパーカーの象徴であったリトラクタブル・ヘッドランプなど当時の日本車としては見所満載で、デビューと同時に人気車種となる。当初は自然吸気の2ローターで130psだったが、1983年からはターボ付きの165ps仕様が追加され、スポーツカーとしてのパフォーマンスをさらに高めた。SA22Cの型式で呼ばれ、現在もマニア達から愛され続けている。
1975年辺りから日本中の少年(と一部の少女)の間で巻き起こった社会現象的ブームのおかげで、少年だった僕達は、世の中にはドアが縦に開くクルマもあれば、ヘッドランプがパカッと開くクルマもあるということを知った。
車高は低ければ低いほど、鼻先が尖ったクサビみたいなカタチをしてればしてるほど、それはカッコイイのだと思い知った。
1978年辺りになるとブームは沈静化し始めるが、それでもケータイやネットがない時代、興味を持って一度ドップリとはまった趣味から逃れる理由もなく、相も変わらず気持ちの中でクルマばかりを追いかけてる少年の何と多かったことか。
そうした少年達の目から見れば、当時の日本車は情けないことこの上ない存在だった。ハッと目を奪われるようなスタイルもしてなければ、時速300キロどころか200キロにだって届かない。
生まれ育った国のクルマを応援したい気持ちはあっても、1973年のオイルショックや厳しさを増す一方の排ガス規制の影響で骨抜きにされていて、ほとんど取りつく島がない状況だった。
が、その1978年、そうした少年達を「わっ!」と驚かせるクルマが登場した。ペタリと低い車高、尖ったフロントノーズ、そしてリトラクタブル・ヘッドランプ。そう、マツダ・サバンナRX-7である。
幻のトヨタ2000GTを唯一の例外とすれば、当時の少年達はここまでスーパーカーっぽい国産スポーツモデルを見たことがなかった。当然だ。存在してなかったのだから。
エンジンは12A型の2ローターで、たった130ps/16.5㎏mに過ぎず、最高速はやっと200㎞/h、ゼロヨンは15.8秒。当時の日本車としては俊足だったが、スーパーカーと呼べるほどのものではなかった。
が、何せリトラクタブル・ヘッドランプである。尖ったスタイルである。その姿で市販されることがどこか誇らしいような気持ちになれたし、当時の少年達が頭の中で「あと何年かして免許を取ったら乗りたいクルマ」と夢想をするのに充分だった。
しかも値段は169万円。オトナになれば手が届くんじゃないか? と思える範囲に留まっていた。僕達は初代RX-7に、小さいけれど確かな夢を授けてもらったのである。
2002年に3代目が生産中止となって以来、RX-7の血筋は途絶えたままだ。あの頃に夢を与えてもらった元少年のひとりとして、僕も復活を強く強く望んでいる。
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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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