日本の誇れるクルマ

アヘッド 日産GT-R

MAZDA ROADSTER

オープン・2シーター 市場の広がりを 先導したロードスター

アヘッド マツダ ロードスター

*初代から数えて、生産累計は90万台を超えた。「2人乗り小型オープンスポーツカー」のジャンルでは生産累計世界一として、ギネスに認定されている。写真は2011年10月に発売された特別仕様車「BLACK TUNED」。

前置きも何もなしでナニだけど、何が世界に誇れるって、このマツダ・ロードスターの存在ほど、日本人がドヤ顔で腕組みしながらのけぞるくらいに胸を張れるモノはない。だって当然だろう。このクルマは、世界のスポーツカーを救ったのだから。大袈裟? いやいや、とんでもない。

金に糸目をつけない人のための贅を尽くしたスーパーカーは独自の発展の仕方をしてきたから別カテゴリーだが、僕達のような庶民だって頑張れば手が届き、日々の相棒のようにつきあえるスポーツカーっていうのは、このクルマが登場しなかったら絶滅してたかも知れないのである。

話は簡単だ。'70 年代辺りから多くの人々はクルマに快適性や豪華さを求める傾向が強くなり、同時に世界のメインマーケットであった北米の衝突安全基準がどんどん厳しさを増していく。クローズドボディの普通の乗用車ですらガッチリと鈍重になることを強いられた時代。

1950年代の終り頃に大きな花を開き始め、世界中のクルマ好き達を笑顔にさせて彼らの人生を彩ってきたライトウエイトスポーツカーやオープンカーは、死滅寸前だった。軽快さや爽快さが何よりの生命線。羽をモギ取られたら死んだも同然だ。

何とか生きながらえようと迎合を積み重ねた自動車メーカーもあったが、歌を忘れたカナリヤになど次第に誰も期待しなくなる。メーカーだって慈善事業じゃないのだから、ビジネスに悪影響を及ぼすなら手を引くしかない。

そんな風潮が蔓延して久しかった1989年、マツダが送り出した“ロードスター”は、発売直後から世界中で大反響を呼ぶ大ヒット作となった。魅力的なスポーツカーをちゃんと造れば売れるということに気づいた世界中の自動車メーカーが、その後、次々とニューモデルを送り出すことになる。

BMWはZ3を、メルセデスはSLKを、ポルシェはボクスターを、そしてフィアットはバルケッタを、ロータスはエリーゼを、ルノーはスピダーを…。それこそ名前を挙げ始めたらキリがない。それらの登場がスポーツカーの世界を賑やかにして、幅と奥行きを広げ、ポピュラーなモノに引き戻してきてくれて“今”に至る、である。

同時にロードスターは、やはり絶滅しかけていた“適度な大きさの後輪駆動”の楽しさを、改めて広める伝道師の役割も果たしてきたのだとも思う。歴代ロードスターの操縦性の楽しさが延々と評価され続けてきたことは、86やBRZが市販車として生み出されたことにも大なり小なり影響を与えていることだろう。


つまりはそういうことである。

ただ、話は簡単だけど、クルマ造りは簡単じゃない。ロードスターのデビューに至るまでの経緯には、それこそ本1冊ができちゃうくらいの濃厚なストーリーがある。そのあちこちにデザイナー陣の、エンジニア陣の、事務方の、推進派の、反対派の…それこそ関わった人達すべての苦労と感動的な逸話が残ってる。

それらを挙げ連ねるゆとりはないけれど、ただひとつ言っておくべきなのは、ロードスターというクルマが理想をカタチにするために、日本人的な極めて細やかな感性と、往くと決めたら大胆に、やると決めたら徹底的にやる、武士道にも似た骨太で潔い精神性を幾重にも折り重ね、手間と真心を惜しみなく注ぎ込んで作られたクルマであることだ。

ロードスターに初めて乗った'89 年の初夏のことを、僕は忘れられない。自分の手足みたいに動いてくれるような、素直で軽快な操縦性。ダイレクトに大空や風と向き合える、爽快なオープンエア。名車と呼ばれるMGやロータスにも負けてない! 素晴らしいオープン・ライトウェイトが日本から生まれた! と、それは感動以外の何物でもなかった。

今やロードスターも3世代目となり、それもモデル末期に入ってる。2代目も3代目も、表現方法に少々違いはあれど、真ん中にズドンと貫かれてる精神性は微塵も失われていない。きっと次世代モデルも──。

こんなスポーツカー、世界のどこを見てもそうあるものじゃないのだ。

アヘッド マツダ ロードスター

'89
世界中に改めてオープンスポーツの魅力を広めた初代NA型。能面や畳模様をはじめ日本の伝統的アイテムをモチーフに盛り込んだ車重1000kg程度の軽量小型ボディと後輪駆動に適度なエンジンパワー。走りの楽しさも抜群だった。

アヘッド マツダ ロードスター

'98
初代のスポーツカーとしての優れた資質をさらに高め、数少ないネガをつぶした2代目NB型。やや大味のグラマラスなフォルムに賛否は分かれたが、シャシーのチューンで走りがさらにエキサイティングになったことは大絶賛された。

アヘッド マツダ ロードスター

'05
時代の要請で車体も大きくなり、同時にプラットフォームもエンジンも全てが一新された現行モデル、NC型。ロードスターらしさをキープすべく細部に至るまでの徹底的な軽量化が行われ、走りの面ではシリーズ最高の仕上がりとなった。

アヘッド マツダ ロードスター

'01
マツダはNB時代の2001年から現在まで、NR-Aというナンバー付ワンメイクレース仕様車を設定。レースをオーガナイズしている。NB、NCともに基本はシャシーを締め上げた程度のチューンだが、それでも通用する辺りに資質の良さが伺える。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

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