日本の誇れる企業 vol.1 タカタ株式会社

vol.1 タカタ株式会社

アヘッド タカタ株式会社

▶︎日本におけるシートベルトの歴史の第一歩を刻んだ、2点式シートベルト。



クルマに乗り降りするたびに触れる部品、それも万が一の衝突の際に体を守ってくれる重要な部品なのに、じっくり観察した経験はないのではないだろうか。

シートベルトのことである。恥ずかしながら筆者も「あなたのクルマのシートベルトは何色ですか?」と聞かれて即答できなかった口だ。取材後にクルマに乗り込んだ際、真っ先に確認したが、黒だった。黒、グレー、ベージュがシートベルト(のベルト部分を専門用語でウェビングと言う)の三大メジャーカラーだが、ひとくちにグレーと言ってもたくさんのバリエーションがある。自動車メーカーによって好みがあるからだ。

タカタ株式会社彦根製造所は日本における同社シートベルト生産のメイン工場で、第3工場に設置したラインでウェビングを生産している。いや、織っていると表現した方が正しい。スイス製の織機が34年前から規則正しい動作で正確に動き、ポリエステルの真っ白な糸を巧みに織り込んで帯状にしていく。ラインに沿って糸巻きが並ぶ様子は圧巻で、シートベルトは織物であることを実感する。

日本で初めて標準装備された2点式シートベルト

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タカタは1933年、琵琶湖に近く、地下水が豊富な彦根市で創業し、織物製造を開始した。先見の明があり、事業の才覚があったのだろう。織物の技術を生かし、船舶で使用する救命索の製造に乗り出した。

転機が訪れたのは第二次大戦後だ。パラシュートの研究を見学するためにアメリカに渡った創業者の高田武三は、多額の費用を投じて育成したパイロットが交通事故で亡くなることから、自動車用シートベルトの開発が行われていることを聞いた。武三は日本でも必要になるときが来ると確信し、シートベルトの開発を決意。帰国後、開発に着手した。

2代目社長の高田重一郎は、本田技研工業の創業者、本田宗一郎にシートベルトの重要性について直談判した。宗一郎は即座に理解を示し、1963年に発表・発売されたS500の標準設定に結びつく。これが、国内で初めて標準装備された2点式シートベルトである。1983年にはアメリカのハイウェイパトロールカーにドライバー用エアバッグを供給(世界初)。
1985年にはメルセデスベンツにフロントエアバッグを供給(世界初)した。2003年にはモーター付きシートベルトを開発(日本初)し、2005年には助手席用ツインエアバッグを商品化(世界初)。2006年には、二輪車用エアバッグをホンダ・ゴールドウィングに搭載(世界初)。2010年には、ベルトにエアバッグを内蔵したエアベルトをレクサスLFA用に商品化し、40年間眠っていたアイデアを具現化させている。

他人のクルマに乗る機会があったら、シートベルトを観察してみるといい。色だけでなく織り柄が異なることもわかるだろう。タカタはフィリピンとブラジルにウェビング生産工場を持っているが、両工場では新しい織り柄を集中して生産している。日本の自動車メーカーは色へのこだわり、織り柄へのこだわりが強い。そうした彼らの細かい要求に応えるため、彦根製造所では多品種少量生産を行っている。

織機で織った真っ白なウェビングは、全長40mほどの機械の中に自動で送り込まれ、染色〜乾燥〜発色〜洗浄〜乾燥〜コーティングなどの工程を経てロールにまとめられる。染料を吸着させる発色炉では、210℃の熱でウェビングに染料を吸着させると同時に、テンションロールでウェビングを引っ張ったり縮めたりして伸度(引っ張り力がかかった際にどれくらい伸びるか)を調整する。

安全装置のからくりは、リトラクター

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▶︎大きくはベルト部分(ウェビング)と巻き取り装置で構成されるシートベルト。構成部品のすべてを自社で製造しているのもタカタの大きな強み。


当たり前のように装着しているので意識することはあまりないが、シートベルトは乗員を拘束する安全装置である。例えば車両が前面衝突した場合、乗員には大きな加速度が発生する。つまり、自分の意思とは裏腹に体が前に飛び出していく力が働くわけだ。とっさの間に受け身の姿勢をとることは不可能だし、たとえ体を支える準備ができたとしても、加速度のついた体を支えることは無理である。

そんなことは到底不可能だから、シートベルトで体を拘束するのだ。だが、がんじがらめに縛りつけるだけではなく、シートベルトによる乗員胸部への衝撃を緩和するロードリミッター機構が採用されているものも存在する。

シートベルトを装着したり外したりするとき、ベルトはするすると移動する。グローブボックスに手を伸ばした際もベルトは体の動きに追従してくれる。でも、万が一の衝突時には体が動かないようしっかり拘束してくれるはずで、一体どんな仕組みになっているのだろうか。
リトラクターと呼ぶ巻取装置に、からくりが隠されている。内装パネルに隠れて見えないが、釣りに使うリールのような形をした部品がピラーの根元に設置されている。

衝突を検知すると、プリテンショナーと呼ぶ機能が働く。来るべき衝撃に備えてあらかじめベルトを巻き取り、ベルトと体の密着度を高めておくのだ。そうすることによって、体の移動量を最小限に食い止めることができる。そのプリテンショナーを機能させるのは火薬だ。火薬の力でパイプに収められた球を動かし、ベルトが巻かれているリールと結合された歯車を逆回転させ、ベルトのたるみを取り除くのである。
ちなみに、プリテンショナーを作動させるほどではない軽微な衝突の場合は、ベルトの引き出し速度に反応するロック、あるいは加速度に反応するボールを利用したロックの2種類のロック機構で対応する。

アイデアと努力で更なる安全性向上を目指す

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拘束性能をさらに高めるアイデアがモーター付きのリトラクターだ。モーターの力を利用することで、プリテンショナーよりも早い段階でベルトを巻き取り、拘束性能を高めることができる。アクシデントを未然に防ぐアクティブセーフティの面でもモーター付きは効果があり、居眠りなどをした際にベルトを軽く引き込み、ドライバーに注意を促すといった使い方も可能だ。

こうして付加価値を高めながら、タカタはリトラクターの小型軽量化に取り組んでいる。自動車メーカーは燃費を向上させるためにねじ1本に至るまで軽量化に取り組んでおり、その方向でもサプライヤーとして貢献するためだ。

先進的なシートベルトの最新事例が、レクサスLFAに採用された、ベルトとエアバッグを一体化したエアベルトである。通常、シートベルトは前面衝突のみに対応し、側面衝突にはカーテンエアバッグが有効とされているが、エアベルトの場合は側面衝突にも効果を発揮する。

既存のシートベルトに比べるとまだまだ高価なシステムであるため、採用の拡大を目指し、改良を模索中だ。
製造や開発の技術だけでなく、研究やテストの設備が充実しているのもタカタの特徴だ。クルマから発生する振動を模擬し、雑音の発生確認を半無響室で行うことが出来る。

材料分析室では材料の成分や構造解析を通じて素材の掘り下げを行うほか、組み上がった製品をCTスキャンにかけ、非破壊で内部の状態を確認することができる。大型恒温槽ではマイナス40℃から100℃の環境でエアバッグ単体、あるいはクルマごと観察することが可能。紫外線や赤外線の影響を調べることもできる。空中を飛び交う電波が機器に悪影響を与えないか調べるための試験室もある。人体模型(ダミー)を利用した衝突試験も安全性向上に欠かせない試験だ。

使い手にその存在を意識させないほど見慣れ、扱い慣れた部品の裏には、安全を第一に考える思いやりと知恵、そして努力が隠されている。

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