デジタルライテク元年 Vol.2 イタリアンビッグツイン編 DUCATI 1299 パニガーレ

アヘッド デジタルライテク元年 Vol.2 イタリアンビッグツイン編 DUCATI 1299 パニガーレ

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2015年のモデルチェンジで登場したドゥカティ1299パニガーレは、搭載されるエンジンが1285㏄となり、世界スーパーバイク選手権のレースホモロゲーション対応モデルとは一線を画す存在となった。またこれにより、前モデルの1199パニガーレは引き続きレース用マシンとしてラインアップされている。

text:丸山 浩 [aheadアーカイブス vol.148 2015年3月号]
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デジタルライテク元年 Vol.2 イタリアンビッグツイン編 DUCATI 1299 パニガーレ

デジタルライテク元年 Vol.2 イタリアンビッグツイン編 DUCATI 1299 パニガーレ

これの意味するところは、やはりドゥカティのLツインエンジンに対する拘りだろう。レースにおいては、高速域での伸びのある直列4気筒エンジンに分がある。

そこに敢えてV型2気筒で挑み、更に勝てるマシンを送り出してくるドカティの技術力は一線級と言えよう。だが200馬力超のパワーを引き出された1200㏄クラスのLツインエンジンは、必然的に高回転型のピーキーな特性となる。これはストリートユーザーにとっては、扱いづらいものだ。

それに対してドゥカティの出した答えが、レースホモロゲーションというしがらみを取り払った、純粋なLツインスポーツバイクの醍醐味を追求したのである。

排気量の拡大により、ピークパワーを保ちつつも低回転域のトルクも確保する。これによって全域で扱い易いエンジン特性を実現させようという意図だ。
そんな新型パニガーレをテストする機会は、2月上旬に訪れた。ステージはポルトガル・アルガルヴェ国際サーキット。他に例を見ないほどの激しいアップダウンを持つコースだ。メインとなる試乗車は、上位グレードのS。外観上は先代から大きな変化は無く、しかし細部の仕上げはより洗練された様子だ。

一方中身は近頃の傾向宜しく、電子制御完全武装。トラコンやABSは勿論のこと、セミアクティブサス(スマートEC)、オートシフター(DQS)、ウイリーコントロール(DWC)エンジンブレーキコントロール(EBC)等々。

これら電脳パワーの力なのか、圧倒的なパワーを誇る新型は意外なほどに扱いやすかった。ストレートで全開にしても「本当に205馬力も出ているのか」と思うくらいだ。とは言え、最高出力付近のパンチは確実に1199を上回っている。

それでいて無駄なホイルスピンもさせずに加速するよう制御されているから、スピードの乗りも速い。応答性の良いエンジンレスポンスも、ハンドリングを邪魔しないよう開け始めはマイルドに調教されている。特にコーナーの進入時で悩まされがちな2気筒特有の強大なバックトルクも、EBCにより上手く抑えられている。

シフトダウンしながらマシンを寝かしても、リアタイヤが流れること無くコーナーへアプローチ出来る。

オートブリッピングを備えたDQSのシフトフィールも至極スムーズだ。これはクラッチレスでのシフトチェンジを可能とする機構で、4輪で例えるならパドルシフトに近い。シフトペダルへの入力に対して即座に反応し、シフトミスも起きない。変速ショックこそ大きいが、EBCやトラコンにより挙動を乱すことも無い。
だがこれらが総合的に創りだす実際の走りは、電子制御の存在感が薄い。或いは最小の電子制御介入と思うくらい、自然な設定なのがパニガーレの面白いところだ。

例えば、勾配の付いたホームストレートを登り切った先では、経験上アクセルを戻したくなるほどにフロントが持ち上がる。コースレイアウト的に慣性力にもよるだろう、しかし故意にアクセルワークでフロントを持ち上げようとすれば、それはなかなか難しいので、やはり制御はきちんと効いているようだ。

この自然な電子制御の存在は、フィーリングを重視したドゥカティの演出とも捉えられる。最新技術でライディングをバックアップしつつも、あくまで主役をライダーに据える、イタリアメーカーらしい舞台作りである。

残念ながら今回のテストでは霧雨が断続的に降ったため、最新電脳の真価を確認するには試乗時間が少なすぎた。その機会は日本でのテストまで持ち越しとするが、今回の難コンディションは電子制御についての理解を深める手助けにもなった。

ここまで電脳進化の度合いが凄いと何をしたってヘッチャラな様にも思えるが、当然そんな事はない。あくまで電子的なコントロールの出力先は加減速に関する部分、即ち縦Gのみであるからだ。つまり旋回時に発生する遠心力=横Gのコントロールは、依然としてライダーの手に委ねられているということ。

となると今回のコンディションが正しくそうだが、ウェット路面やタイヤの冷間時には尚のこと、従来通りライダー自身が横Gの入力には十分注意する必要がある。逆を言えば横Gのコントロールだけに集中できるので、素のバイクに比べて電脳化のアドバンテージはやはり高い。

これからも、電子制御は対応範囲を広げていくだろう。そんな過渡期にあるマシンを乗りこなすには、電子制御が何をどこまでコントロールしているのかを明確に把握する必要がある。そのポテンシャルを如何に引き出すかが、今後のライテクの鍵となるだろう。
●DUCATI 1299 Panigale S
車両本体価格:¥2,999,000(税込)
排気量:1,285cc
最高出力:175hp (8,750rpm)
最大トルク:140.5Nm (8,750rpm)
2015年夏日本導入予定
*諸元値は日本仕様
*写真はイタリア本国仕様

問い合わせ先:ドゥカティジャパン[フリーダイヤル]
0120(030)292
www.ducati.co.jp/

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text:丸山 浩/Hiroshi Maruyama
1985年に二輪でデビュー。国際A級ライダーとして全日本ロード、鈴鹿8時間耐久レースなどに参戦。4輪においても、スーパー耐久シリーズに自らのチームを率いて出場するなど、二輪・四輪の両方で活躍してきた。約4年前にガンを患うも乗り越え、現在も精力的に活動している。
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