忘れられないこの1台 vol.67 シボレー・コルベット

アヘッド シボレー・コルベット

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20歳で芸能という世界に飛び込み、運よく仕事が動き出して数年した頃だ。バブルな時代でもあった。そんな世相の中、初めて買った「派手なクルマ」が中古のシボレー・コルベットだった。

text:大鶴義丹 [aheadアーカイブス vol.145 2015年12月号]
Chapter
vol.67 シボレー・コルベット

vol.67 シボレー・コルベット

▶︎1954年に初代コルベットが登場してから4代目となるC4は、ダイナミックで力強いそれまでのデザインから大きく路線変更し、アメリカンからヨーロピアンスタイルに。構造的にもエンジン以外のほぼすべてを新規に設計しなおした。


今思えば22歳のガキが何がコルベットだと噴飯ものだが、当時の自分は、そのクルマを自分の稼いだお金で買うことで、芸能という不確実な世界に飛び込んだ中での現実感が欲しかったのだろう。

コルベットが象徴するアメ車の歴史も何も関係なかった。300万円という予算で買える一番派手で一番速そうなクルマ、それが初代C4コルベットの三年落ち平行輸入の中古車だった。

今はない板橋のアメ車屋さんに並んでいた真っ黒な一台。それを大して調べもせずに入店して五分で買った。結局、後からエアコンが壊れたり、オーバーヒートをしたりしたが、数ヵ所を15万円くらいで直したら、その後は真夏でもなんでもガンガン走ったので、当時の並行輸入モノとしては意外と大当たりだったのかもしれない。

コルベットが自宅に届いたときの興奮は忘れない。家の前で鎮座している大きく平べったい真っ黒な車体は、まるで宇宙船そのものだった。エンジンをかけると聞いたこともないような野太い咆哮が住宅街に響き渡り、自分がコルベットのオーナーになったことをやっとリアルに受け止められるようになった。

大人の社会というモノを知ったのも、このクルマのおかけであると思っている。同時にそういう「派手なクルマ」に乗ったならば、それ相応の責任が生まれるということも知った。それがなければ単なる借りてきた外車のようなものになり、それに乗っている者は倍返し的に恥をかくということも理解した。

今思うと、精神的にも成熟してから乗るべきクルマだということだ。

その大きな理由はハイパワー車のリスクや燃費の悪さではない。「極端に派手」な外見がこじ開けるトビラは、「良い縁」も呼び寄せれば、「最悪の縁」も呼び寄せる魔力を持っているからだ。22歳の子供にはそれを区別できる能力がない。

悪いモノとのトラブルもたくさん知ったなかで、私はたまたま運良くそういうクルマの持つ魔力を理解した。だが、ああいう時代故に、その魔力に飲み込まれていった者たちもたくさん見てきた。

今ではいろんな大事なことが分かってきたし、意味のある立ち振る舞い、用心深さ、反対にいざという時の博打の意味も分かってきた。しかしそういうことの原点にあるのは、あのコルベットの魔力が開いてくれた「トビラ」を、若くして覗き込んだおかげなのかなと思うことがある。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968
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