現代のスーパーカー vol.2 Mclaren MP4-12C オールブリティッシュのマクラーレン

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フェラーリの創設者である故エンツォ・フェラーリが「スポーツカーを造って売るのはグランプリを戦う資金を得るためだ」と公言していたのは有名な話。確か1960年前後の逸話だったと記憶してるが、このところ時々その言葉が頭をよぎる。F1グランプリでフェラーリ最大のライバルといえるマクラーレンが市販スーパーカーの分野に本格参入し、日本でも、じきにデリバリーが始まるからだ。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.112 2012年3月号]
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vol.2 Mclaren MP4-12C オールブリティッシュのマクラーレン

vol.2 Mclaren MP4-12C オールブリティッシュのマクラーレン

マクラーレンは1966年からF1に参戦し、優勝回数とドライバーズタイトル獲得回数ではフェラーリに次ぐ歴代2位、コンストラクターズタイトルではフェラーリとウイリアムズに次ぐ3位という超名門である。

それがなぜ今になってスーパーカーを量産販売? と疑問は湧くが、仮に質問を投げても「機が熟したからだ」という答えが返ってくるだけだろう。過去にもロード・カーを少量生産したことはあって、'91年に発表した“F1”というモデルは今でも伝説のスーパーカーとして頂点に君臨し、新車当時で約1億円だった売価が中古となった今では時価3億円オーバーという状況をも生んでいるくらいだ。
 
けれど今度のスーパーカー生産はだいぶ様子が違う。確かに“F1”は素晴らしかったが、市販台数70台程度では遊びの延長ようなもの。今やスーパーカー部隊は“マクラーレン・オートモーティブ”の名で経営的にはひとつの企業として独立し、生産工場を設けて従業員も大量に雇用、年間1000台以上の量産計画を掲げて“MP4¦12C”というクルマの生産にあたり、市販するのだ。

外誌で見た写真には、おそらくマクラーレン史上初だろうが、パーツにマクラーレンのロゴと部品番号が刻まれたシールが貼られていた。どれほど本気なのかが判ろうというものだ。
 
しかもその“MP4¦12C”の設計から開発にあたっては、同じマクラーレン・グループの中にあるF1開発部隊の設備もテクノロジーも人材もふんだんに投入されていて、出来上がったクルマは直接のライバルと目されるフェラーリ458イタリアを、エンジン・サウンドの官能性以外、速さの面でもフィールの面でもあっさりと凌駕していると世界的に絶賛の嵐なのである。

しかも日本での新車価格は2790万円、458イタリアは2830万円。照準は間違いなくフェラーリだ。
 
マクラーレン・グループ総帥のロン・デニスは完璧主義者として知られ、大の負けず嫌いでもあるらしい。もちろんビジネスとして成立する目算があるからやるのだろうけれど、このF1の場外乱闘版、ロン・デニスの隠れたエモーションが引き金になったのでは? と想像すると妙に楽しい。故エンツォもそうだったが、表向きはどう振る舞おうと、レースに関わる人間が熱くないわけがないのだ。
マクラーレンMP4-12Cは、英国マクラーレン・オートモーティブ社が独自に開発して2011年に発表したスーパーカー。カーボン“モノセル”と呼ばれる一体成型カーボンファイバー・シャシーに600ps/61.2kg-mの自社製3.8ℓV8ツイン・ターボ・エンジンと7速デュアル・クラッチ式2ペダルMTを搭載するミドシップ・カー。車重は1336kgと軽量で、0-100km/h加速3.1秒、最高速度は330km/h。GTレース用のマシンも発表され、この2012年から本格参戦を開始する。
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text : 嶋田智之/Tomoyuki Shimada

1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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