ECO時事通信 vol.12 アイドリングを止めるか、否か。

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いよいよ自動アイドリングストップシステムは装備されていて当然になってきた。仕事で試乗するのは新型車ばかりなので、最近は信号待ちでエンジンが止まらないほうが不思議というか気持ち悪いぐらいに感じるようになってしまった。

text:石井昌道 [aheadアーカイブス vol.112 2012年3月号]
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vol.12 アイドリングを止めるか、否か。

vol.12 アイドリングを止めるか、否か。

先日試乗したフェラーリFFも458スパイダーも、停止するとスッとエンジンが止まって静寂に包まれる。

フェラーリに限ってはあまりに音が快感なので信号待ちでも聞いていたい思いもあったのだが、実際に体験してみるとアイドリングストップしたほうが楽しかったりする。信号が青になってブレーキペダルをリリースすれば、あの快音がまた聞けると思うとワクワクする。つまらない街乗りにもちょっとしたメリハリをもたらしているのだ。
 
フェラーリはHELE(ハイエモーション・ローエミッション)というオプション装備に含まれるが、メルセデス・ベンツAMGは最新のターボエンジンなら標準装備。ハイパフォーマンスカーでさえ自動アイドリングストップシステムは必須となっている。
 
ボクが縁あってエコドライブのインストラクターを始めたのは2005年。当初からアイドリングストップの有効性は確認しており、なんとか広めたいという思いはあった。

なにしろ日本の都市部ならば1時間走ると20分以上は信号待ち。その時の燃費改善効果は最低でも5%、うまくいけば15%ぐらいにも及ぶ。エコドライブには我慢というイメージもあるが、信号待ちでエンジンを止めるだけなら走りに気を使うことなく、繊細なアクセルワークなどテクニックを習得する必要もないので超合理的。この大きなメリットは是非万人が享受すべきだと思っていたのだ。  
 
2005年当時、自動アイドリングストップシステムが搭載されているクルマは、トヨタ・ヴィッツとダイハツ・ミラぐらい。それも100万円台の低価格車で10万円ぐらいの装備とあっては普及が難しく、2〜3万円の補助金が付いてもあまり売れなかった。

講習会では自らキー操作してアイドリングストップを実行してもらっていたが「バッテリーやスターターが壊れることはないのか?」という質問に対しては「それほど古くないクルマで、キチンと定期点検を受けていれば大丈夫ですよ。でも無理はしないでくださいね」と少々曖昧に答えるしかなかった。

実際にはスターターが使う電力や、それをどれぐらい走ればオルターネーターの発電で取り戻せるのかなどデータを細かくとってもいたが、あらゆるクルマ、あらゆる状況を保証することなんてとても無理。アイドリングストップは燃費改善に大きな効果があることを実感してもらい、自動アイドリングストップシステム付きのクルマが増えるといいよね、という思いを持った人を増やすことのほうが現実的だった。
 
最近はその願いがようやく叶った気がして嬉しいのだ。ただし、発売されたばかりのレクサスGSは自動アイドリングストップシステムを見送っている。「再始動時の振動などが取り切れず、レクサスとしての快適性を得るには至らなかった」というのが理由。

同時期に日本発売されたBMW3シリーズは、確かに再始動時にショックがあってやや興醒めではあるが、それでも付いているだけでありがたい。オフスイッチもあるんだから、アイドリングストップが煩わしい人は解除すれば済む話だ。GSは同クラスのメルセデス・ベンツEクラスと比較すると同じ3・5ℓエンジンで10・15モード燃費が20%以上負けているのだからそんなこと言ってる場合じゃないような気がするのだ。
 
2012年発売の新型車、それもコストをケチる必要がない高価格車でアイドリングストップシステムが付いていないというのは逆に驚きだ。まだまだ目を光らせていないといけないということだろう。
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text : 石井昌道 / Masamichi Ishii
モータージャーナリスト。スポーツカーやモータースポーツを愛する一方、ハイブリッドやEVに造詣が深い。
取材力と鋭い分析力を生かし、自動車業界の行く末について執筆や講演を行っている。現在の愛車は『インサイト』。
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