岡崎五朗のクルマでいきたい vol.33 刷り込みの危うさ

vol.33 刷り込みの危うさ

アヘッド 岡崎五朗のクルマでいきたい

とくに86はフロントに対しリアサスペンションを相対的に硬くしているため、制動による前輪への荷重移動など「きっかけ」さえ作ってやれば、あっけなくテールがスライドを始める。それに合わせてカウンターステアを切り、アクセルを適切なタイミングで、適切なだけ踏み込めばドリフト状態を維持することができる。
 
標準でESC(横滑り防止装置)が装着されるため、ある一定以上のドリフトアングルが付けば外輪側に制動がかかって姿勢は安定方向に引き戻されるが、ESCは手動で解除が可能。解除すれば、派手なドリフトを演じられる代わりに、スピンに陥るリスクも発生する。
 
自らの責任とリスクのもと、サーキットのような場所でドリフトを楽しむのは大いに結構。スピンもどんどんすればいい。しかし、公道上でタイヤを滑らせるような極限状態に持ち込むのは、神をも恐れぬ行為に他ならない。にもかかわらず「ドリフトこそがFRのすべてだ」などと言い切る評論家までいることには呆れてしまう。
 
もちろん、クルマの運転をするのは分別ある大人であり、いかに他人が扇動しようとも最終的な責任はドライバーにある。とはいえ、86&BRZを買ったらドリフトをしなくちゃ意味がないような刷り込みをされたら、試してみたくなるのが人情というもの。これが危うい。あえて言うが、ドリフトという非日常的行為は86&BRZの価値のほんの一部であり、決してすべてではない。

むしろ、低いアイポイントが生みだす独特の視界感覚や、ステアリングのひと切り、アクセルのひと踏みに対する気持ちのいい反応など、日常で感じられる気持ちよさこそが86&BRZの魅力だ。ドリフトなんてしなくても、十分に楽しく、気持ちのいいクルマだということを、ぜひとも覚えておいて欲しい。

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