岡崎五朗のクルマでいきたい vol.32 ハイブリッドが売れる国

トヨタ アクア

ハイブリッドの 新機軸

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97年に世界初のハイブリッドカー「プリウス」を投入して以来、常にハイブリッド開発の先頭を走り続けてきたトヨタ。しかしその歴史は当初から順風満帆だったわけではありません。

初代プリウスは、技術的インパクトこそ大きかったものの、価格の高さや燃費への関心の薄さから、商業的にはさしたる成功を収められませんでした。プリウスが本格的に販売台数を伸ばし始めたのは2代目になってからのことです。加えて、海外メーカーからは「機構が複雑でコストが高く重量も重い」とか「バッテリーを搭載しなくてはならないためトランクスペースが犠牲になる」といった批判も受けました。
 
事実、これまでのハイブリッドは、非ハイブリッド車と比べると価格は高く、トランクスペースも小さめでした。そんなハイブリッドの弱点解決に正面から取り組んだのがアクアです。トヨタはアクアを「17年間にわたるハイブリッド研究の集大成」と位置づけていますが、実車を眺めるとなるほどその通りだと感じさせられます。
 
エンジンは初代と2代目のプリウスが搭載していた1・5ℓのアトキンソンサイクルと同形式ですが、アクアに搭載するにあたって約70%のパーツを新設計し効率を大幅に高めました。ハイブリッドシステムの要であるモーターと動力分割機構も新しいタイプになり、大幅な小型軽量化を実現。バッテリーもより小さくなっています。
 
その結果何が起こったのでしょう? 答えはアクアのバックドアを開けると見つかります。そこにあるのは目を疑うほどの広い空間。プリウスでは後席背後に搭載していたバッテリーを後席の座面下に収めることにより、非ハイブリッド車と同等の広々したラゲッジスペースを実現しているのです。それどころか、310ℓという容量は、ほぼ同じボディサイズをもつ「VWポロ」の280ℓを大きく上回るほどです。
 
しかも、車重はポロよりも軽く、なおかつ価格は169万円〜という安さ。そう、狭くて重くて高いというハイブリッドの三重苦はきれいさっぱり消え失せてしまったわけです。
 
それでいて、燃費にもさらに磨きがかかっています。JC08モードで35‌km/ℓ、10:15モードで40‌km/ℓという数値はプラグインハイブリッドを除けば市販車最高。適度に軽快なフットワークや優れた静粛性、カラフルな10色のボディカラーも魅力的です。インテリアの安っぽさには注文を付けたくなりますが、アクアには売れる要素がギッシリ詰まっています。実際、すでに数ヶ月の納車待ちが発生しているそうです。

トヨタ アクア

空力に優れたコンパクトなボディを持つハイブリッドモデル。ロングホイールベースの中にハイブリッドユニットとエンジンを低く配置する低重心設計で、優れた操縦性を実現。ハイブリッドバッテリーを小型化しリヤシートの下に配置することで広い荷室空間とした。ボディカラーは全10色。

車両本体価格:¥1,690,000(L)
全長×全幅×全高(mm):3,955×1,695×1,445
車両総重量:1,325kg
乗車定員:5人
エンジン:水冷直列4気筒DOHC
総排気量:1,496cc
最高出力:54kW(74ps)/4,800rpm
最大トルク:111Nm(11.3kgm)/3,600-4,400rpm
モーター:交流同期電動機
最高出力:45kW(61ps)
最大トルク:169Nm(17.2kgm)
JC08モード燃費:35.4km/ℓ
駆動方式:前輪駆動

スバル インプレッサ

ゴルフに 戦いを挑む

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新型インプレッサに乗って感じたのは、VWゴルフと正面から闘おうとしているなということでした。ゴルフといえばこのクラスのベンチマークであり、どのメーカーも開発の際には必ず参考にするモデルです。しかし、参考にするのと戦いを挑むのとは別の話で、多くのメーカーは最初からゴルフに追い付くのを諦めているフシがあります。
 
その点、インプレッサは違います。たとえば“超”が付くほど滑らかなステアリングフィール。FF車でこれほど滑らかなフィールを実現しているクルマは世界でもゴルフとインプレッサだけ。ダッシュボードやドアトリムに“ソフトパッド”と呼ばれる素材を使ってきたのもゴルフを意識した結果です。

このクラスの日本車のインテリアは、質感や触感には目をつぶってコストの安いハードプラスティックを使うのが常識でした。インプレッサより1クラス上のレガシィやアテンザでさえハードプラスティック製だといえば、インプレッサの贅沢ぶりがよく分かるでしょう。滑らかさのなかにカチカチという精緻なクリック感を伝えてくるオートエアコンの温度調整ダイヤルにも驚かされました。正直、歴代のインプレッサは走りはいいものの、インテリアの質感は最低でした。

ところがどっこい、新型は短所だった部分を長所へと変えてきたのです。
 
インプレッサの開発責任者である竹内明英氏は「いくら走りが良くても、お客様に乗ってみたいと思っていただけなければ意味がないですから」と言っていますが、それは正論であると同時に新型インプレッサのアピールポイントでもあります。

外観デザインはもうちょっと攻めてもよかったと思いますが、クラスを超えたインテリアの質感や広くなった室内、新型エンジンとCVTの採用によって大幅に改善した燃費と動力性能のバランスポイントなど、インプレッサにはカタログを眺めた段階で「乗ってみたい」と思わせる実力が備わっています。
 
結果、試乗へと駒を進めれば、購入に至る確率はかなり高いはずです。というのも、ドライブフィールはインプレッサの得意中の得意種目だからです。「旧型2ℓ車並みの走り」を謳うだけに、1・6ℓ車でも動力性能に不足はありません。そして何より、足をしなやかに動かしながら路面をきっちり捕まえるフットワークが素晴らしい。

ボディタイプはセダンのG4、ハッチバックのスポーツの2種類を用意していますが、ドライブフィールはほとんど同じ。好みと用途に応じて選べばOKです。オススメはステレオカメラを使った衝突防止システム「アイサイト」を搭載した1・6ℓモデル、と言いたいところですが、アイサイトが装着できるのは2ℓのみ。これが唯一の残念な点です。

スバル インプレッサ

スタイリッシュな外観と質感の高い内装の実現と、クルマの本質的な愉しさである走りの気持ちよさと環境性能の向上が開発のテーマ。ホイールベースの拡大やドア構造の見直しなどにより従来同等のボディサイズに快適に過ごせる室内空間を実現。全面新設計されたボクサーエンジンを採用。

車両本体価格:¥2,194,500(2.0i EyeSight)
全長×全幅×全高(mm):4,580×1,740×1,465
車両重量:1,615kg
乗車定員:5人
エンジン:水平対向4気筒2.0 DOHC
16バルブ デュアルAVCS
総排気量:1,995cc
最高出力:110kW(150ps)/6,200rpm
最大トルク:196Nm(20.0kgm)/4,200rpm
JC08モード燃費:15.8km/ℓ
駆動方式:4輪駆動

ホンダ Nボックス

箱形を煮詰めた 究極系

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昨年、日本では420万台の乗用車が売れましたが、その3割以上が軽自動車でした。そんな状況を受けトヨタや日産までもがOEMで軽自動車の販売を開始。ホンダも負けじと軽自動車に本腰を入れ始めました。ホンダの軽といえば67年にデビューしたN360が有名ですが、その“N”の文字を受け継ぐ3台のニューモデルを今年中に投入し、ダイハツとスズキを追撃するというのがホンダのシナリオです。
 
その第1弾となるのがNボックスです。F1やNSXといったスポーティーなイメージが強いホンダですが、実はステップバンやステップワゴンなど、箱形のクルマをつくるのも得意技。事実、Nボックスには軽の常識を覆す広さという大きな特徴が備わっています。
 
Nボックスを開発するにあたって、ホンダはエンジンとプラットフォームを新設計しました。エンジンは性能もさることながら、コンパクトさを徹底的に追究。衝突時にきれいに潰れるように補機類の形状やレイアウトを吟味することで、十分なクラッシャブルゾーンを確保しつつ、ホンダ車史上最短のエンジンルーム長を実現しました。

これにより室内長はダイハツ「タント」を凌ぐ軽最長に。具体的にどのぐらいの広さかといえば、後席に座ると足をピンと伸ばせるほど。あまりに広すぎてオットマンが欲しいなと感じます。法律で軽自動車の定員は4人までと決まっていますが、縛りがなければ3列シートも成り立つ広さです。
 
加えてホンダが特許をもつセンタータンク(燃料タンクを運転席下に搭載する)レイアウトを採用することで、後席を畳んだときの積載力はちょっと信じがたいレベルになっています。なにしろ26インチの自転車を楽に飲み込んでしまう。お子さんが自転車で出かけたものの雨が降ってきた…そんなときでも、自転車ごと積み込んで家に帰れます。
 
そうはいってもそこは軽。広いからといってファミリーカーとして遠出に使うとなると厳しい部分もあります。4人乗ると1トンを悠に超える重量があるだけに660ccのエンジンの余裕はギリギリで、登坂時や加速時にはエンジンの回転数が上がり室内はかなり騒々しくなります。
 
というわけで遠乗りをする機会が多いならターボがオススメですが、その場合気になるのが166万円という価格と燃費。税金や保険料での優遇はあるものの、この価格だと他の選択肢が見えてきてしまうのも事実で、やはりここは「抜群に使い勝手のいいシティカー」として、130万円台のノンターボ車を選んでおくのが正解でしょう。

ホンダ Nボックス

日本にベストな新しい乗り物を創造したいという想いを込めた新型軽自動車「N」シリーズの第一弾モデル。新設計のプラットホームとパワープラントを採用。センタータンクレイアウトと小さなエンジンルームによりクラス最大級の室内空間を誇る。アイドリングストップシステムを搭載。

車両本体価格:¥1,240,000(G/2WD)
全長×全幅×全高(mm):3,395×1,475×1,790
車両重量:930kg
乗車定員:4人
エンジン:水冷直列3気筒DOHC 12バルブ
総排気量:658cc
最高出力:43kW(58ps)/7,300rpm
最大トルク:65Nm(6.6kgm)/3,500rpm
JC08モード燃費:22.2km/ℓ
駆動方式:前輪駆動

スズキ スイフトスポーツ

期待を裏切らない 運動能力

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スイフトの走行性能は国産コンパクトの中では圧倒的です。チャート風に書けばマーチ→ヴィッツ→フィット→デミオ→スイフトといったことになるでしょう。そんな優れたモデルをベースに、さらに性能を引き上げたのがスイフト・スポーツです。
 
ノーマルの1・3ℓから1・6ℓへ換装したエンジンはさらに出力が増し、MTは5速から6速に、ATは4速から7速マニュアルモード付きCVTへと進化しました。その他、ボディ剛性の強化や専用設計したリアサスペンション、モンロー社製ダンパーなど、スイフトスポーツの資料には、そこここにクルマ好きのハートを刺激する文言が並んでいます。
 
スポーツハッチ。強いて分類するならそうなるスイフト・スポーツですが、決してヤンチャなだけのクルマではありません。専用エアロはオリジナルデザインをスポイルせず、むしろ質感を高めていますし、インテリアの仕上げも大人っぽい。イメージカラーのイエローはともかく、黒やシルバーのボディカラーを選べば大人の男性がスーツ姿で乗っていても違和感のない仕上がりです。
 
走り出してみても、そんな印象は裏切られません。荒れた路面ではタイヤの当たりがややゴツゴツしているものの、ガツンという角の立った衝撃はきっちりと抑え込んでいますし、振動もスッと一瞬で収まります。そういう意味で、不快ではない硬さ、さらに言えば質感を伴った気持ちいい硬さと表現するのが適当でしょう。
 
もちろん、鞭を入れればポテンシャルの高さがはっきりと見えてきます。サーキットでも試乗しましたが、タイヤのグリップ限界を超えてスキッドが始まるような走りに挑戦しても、ボディとサスペンションが音を上げることはありません。

街中ではステアリング操作に対して気持ちよく反応するノーズの動きが印象的ですが、サーキットでは先代と比較して大きく向上したリアの安定感に感心しました。リアがしっかりしているから、フロントの応答性を上げているにもかかわらず、不安感につながるような挙動が現れない。まさに「冷汗ではなく気持ちのいい汗をかかせてくれるクルマ」です。
 
6速MTも楽しいけれど、CVTの出来映えも上々で、とくにアクセルを深く踏み込んだときのレスポンスはCVTとは思えないほど。4速ATだった先代ではMTを強く推していた僕ですが、新型ならMTでなくても十分楽しめると報告できます。
 
スイフト・スポーツの登場によってスイフトの優位性はさらにいちだんと高まりました。コンパクトカーだからといって何も妥協しない…そんな開発陣の素晴らしい仕事に大きな拍手を贈りたい気分です。

スズキ スイフトスポーツ

スイフトをベースに、高出力の1.6ℓ専用エンジンやトランスミッションを搭載。専用設計のリヤサスペンションなどにより機敏なハンドリングを実現した。エクステリアにはスポーティなシルエットを生み出すアンダースポイラーやルーフエンドスポイラー、大開口フロントグリルなどを採用している。

車両本体価格:¥1,680,000(6MT)
全長×全幅×全高(mm):3,890×1,695×1,510
車両重量:1,050kg
乗車定員:5人
エンジン:水冷直列4気筒DOHC 16バルブ吸気VVT
総排気量:1,586cc
最高出力:100kW(136ps)/6,900rpm
最大トルク:160Nm(16.3kgm)/4,400rpm
JC08モード燃費:14.

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text:岡崎五朗/Goro Okazaki
1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイトなどで活躍。テレビ神奈川の自動車情報番組『クルマでいこう!』に出演中。

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