オンナにとってクルマとは Vol.20 消えゆくMT車

オンナにとってクルマとは

Vol.20 消えゆくMT車

スポーツカーと言えばマニュアル車という常識が、いつの間にか薄れている。年間100台以上のクルマに試乗する私でさえこんなアリサマだから、世間一般では消える寸前だろう。日本で売っているマニュアル車は全体の2〜3%程度(乗用車)にまで減り、自動車教習所では女性が約90%、男性は約60%がAT限定免許を取る時代になっている。

私自身、日常的に乗るクルマはATもしくはCVTが好きだ。その方が安全確認やエコドライブに集中できるし、激しい渋滞や長距離ドライブでは、疲労の度合いが変わる。MTモードやパドルシフトが付いているAT車も多いから、山道などで気が向けばMT気分を楽しめるし、なにも不満はないのである。

ただし、それは私がMT免許を持っていて、かつてはMT車に乗っていたことがあるから、そう思えるのかもしれない。以前、20代の知人に聞かれたことがあった。「パドルシフトって、何の意味があるんですか?」。彼女はAT限定免許で、普段はクルマに乗らないから、シフトチェンジの必要性とか、面白さとか、そういったものが分からないという。

なるほどと思った。道路状況やエンジンの回転数に合わせて、自分で考えてシフトを変え、それがピタッと決まった時のクリア感や、クルマが思い通りの動きをするという気持ち良さ。それを体感したことがなければ、パドルシフトの意味が分かるはずもない。この感覚の違いは小さなようで、将来的には決定的に大きな違いになるような恐怖感がある。

操作が増えて忙しいし、片手でハンドルを支える時間が増えるから余計な力を使うし、靴は痛むし、女性にとってMTに乗るメリットはないかもしれない。でもその仕組みや面白さを知らずにAT車に乗ることは、作り方や素材を知らずにコンビニ弁当や冷凍食品を食べるのと同じではないだろうか。

人間として女性として、守らなければいけない大切なものが消えていくようで、心が痛い。

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。
ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。

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