「原型師」という仕事

「原型師」という仕事

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クルマや電化製品など、世の中にある立体物のほぼ全てが原型師(試作模型製作者)の手によって造形され、製品化への道をたどる。今回、その世界で長く活躍している鈴木賢さんに話を聞いた。
 
「その時代は今ほど業界の裾野が広くなくて、仕事として成立するとは思えませんでした」。子どもの頃からモノを作るのが好きだった鈴木さん。プラモデル作りの趣味が高じて、学生の頃には模型雑誌に製作記事を書くようになった。

その後、クルマの木型などを作る会社に就職。デザイナーが描いたイラストをもとに、ノコギリやヤスリで木を削り、原寸モデルを作るのだ。しかしクルマは大きいので、個人が受け持つのは一部分。「クルマ全体を作る事は稀で各パーツ制作が主体といった状況に物足りなさを感じたんです」。

そこで次は家電の試作品を作る仕事に移った。電話やカメラなど全体の形が見えて造り込む作業は、製作している実感もあり更に技術も高められた。同じ頃、昔の仲間や関係筋から現在の仕事が入るようになり、独立することにしたのだという。
 
クルマやバイク、飛行機など原型製作はすべてひとりで行う。図面をもとに樹脂の固まりなどから削り出すのだ。タイヤのパターンなども一つ一つ彫っていく。気が遠くなるような作業である。

しかも単に器用なだけでは成立しないのが原型師の仕事。資料が不足している部分を補完しなければいけないのだ。図面がなく、DVDでも見えない所や矛盾した部分をどうまとめるか。そこで過去の仕事の経験が生きてくる。現実と空想の融合は、難しいと同時にセンスと腕の見せどころなのだ。
 
反面、精魂込めて作った作品が諸々の事情で製品化されないこともある。「好きなキャラクターは必要以上に作り込んで、やり過ぎだと言われることもある。でも好きだから作り込みたくなってしまうんです。しかし、どんなに良いモノができても世に出ず埋もれてしまうことはある。割に合わない仕事なのかもしれません」。日の目を見ない作品にさえ全力を注ぐ姿は正にアーティストである。
 
たかがオモチャ、されどオモチャ。込められている思いの強さを知り、見る目が変わった。

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あるキャラクターを立体化した時、鈴木さんは設定資料にない部分を想像して仕上げた。その製品が世に出たあと、同じキャラクターが立体化されるときには、どれもが鈴木さんの製品と同じように作られるようになった、というエピソードもある。いつの間にか鈴木さんの作品が本物を超えてしまったのだ。原型師冥利につきる話である。

*写真は、いずれも販売終了しているものです。

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text:横田和彦/Kazuhiko Yokota
1968年生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターオーバーまで数多くのバイクやサイドカーを乗り継ぐ。現在はさまざまな2輪媒体で執筆するフリーライターとして活動中。大のスポーツライディング好きで、KTM390CUPなどの草レース参戦も楽しんでいる。

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