DUCATI 1199 PANIGALE(パニガーレ)とは何か 前編 ─1199パニガーレを持つということ─

アヘッド 1199パニガーレ

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「F1 PILOT COLLECTION」、これは、'93年に発表、翌年に発売された「ドゥカティ916」のカタログの、最初の見開きページに記されていたコピーである。美術館と思しき場所で、彫刻と絵画との間に展示されたドゥカティ916の写真が、このバイクは単なるパフォーマンスバイクでないことを物語っていた。

text:神尾 成 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.119 2012年10月号]
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前編 ─1199パニガーレを持つということ─

前編 ─1199パニガーレを持つということ─

実際に、かのアイルトン・セナがそのスタイルにひと目惚れし、発表と同時に特別仕様をオーダーしていたのだ。しかし彼は、完成したそのバイクを見ることなく他界してしまう。だが、セナの特注モデルが埋没することを惜しんだセナ財団の要望で「916セナ」が限定発売され、バイクに乗らないひとまでもが916の美しさに惹かれて購入したという。

ドゥカティ916は、「996」、「998」と進化しても、圧倒的に支持されたスタイルを大きく変えることが許されず、生産を終了するまで世界中のコレクターを魅了し、バイクがオブジェとして鑑賞に堪え得ることを証明していったのだ。

その後、ドゥカティは、'03年に後継モデルとなる「999」を発売、'07年には、「1098」を発売する。卓越した性能は別として、両車共にイタリアンらしい独創的なスタイルで登場したが、エポックだった916ほどデザインでの高い評価は得られなかった。

むしろ、「ビモータ」の創設者のひとりであり、916のデザインを手掛けたマッシモ・タンブリーニが精力的に開発した「MVアグスタF4」の方が、芸術的な観点からは916の後継と呼べる存在になっていた。しかし現在、そのMVアグスタもF4の完成度の高いデザインの呪縛から逃れられず、新たなスタイルを構築できずにいる。
そして今年、ドゥカティが、過去の全てのバイクデザインを凌駕する前衛的なモデルを発売した。それが、「1199パニガーレ」である。

パニガーレとは、イタリアのボローニャの、ドゥカティの本拠がある地区の名前だ。地元の名を冠したということからも想い入れの強さが伝わって来る。LEDを配した個性的なヘッドライト、大胆にスリットやホールを入れたカウル類、微妙な陰影を持つタンク形状など、〝妖艶〟ともいえるこの造形は、新たなオブジェの到来を感じさせる。

もし、1199パニガーレを所有するのなら、ライディング技術の向上よりも、このデザインを深く理解する感性を磨く方が重要になるはずだ。かつてのドゥカティ916がそうであったように、乗っている時間よりも、眺めている時間の方が長くなるバイクなのだから。

エンジン形式:スーパークワドロ L型2気筒
 水冷4バルブデスモドロミック
排気量:1,198cc
最高出力:99kW(135HP) /8,000rpm (日本公道仕様)
最大トルク: 109Nm(11.1kgm) /8,000rpm (日本公道仕様)
フレーム:アルミニウム製モノコックフレーム
乾燥重量:170,5kg
 (ABS装備重量2.5kg込、日本公道仕様)
車両本体価格:¥2,0090,000

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text:神尾 成/Sei Kamio 
1964年生まれ。神戸市出身。新聞社のプレスライダー、大型バイク用品店の開発、アフターバイクパーツの企画開発、カスタムバイクのセットアップ等に携わり、2010年3月号から2017年1月号に渡りahead編集長を務めた。現在もプランナーとしてaheadに関わっている。
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