小沢コージのものくろメッセ その29 ラジオの時間

アヘッド 小沢コージ

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最近、たまにラジオに出させていただくことがあって、妙に楽しい。それは前から思っていたことだが、ときおり自分の中の別人格が垣間見えるからという気がする。もちろん上手く喋れた時、パーソナリティとの相性が合っている時という前提条件付きだが、確実にラジオでしゃべっている「小沢コージ」と、原稿上の「小沢コージ」ではキャラクターが違う。しかし、ヘンな話、どちらも正真正銘の自分なのだ。

text:小沢コージ [aheadアーカイブス vol.165 2016年8月号]
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小沢コージのものくろメッセ その29 ラジオの時間

小沢コージのものくろメッセ その29 ラジオの時間

特にキャラクターを作っているというより、いろいろな物事を考えるスパンであり、判断するスピードが違う。極端な話、原稿ならばいくらでも悩む時間があり、判断を遅らせられる。

もっともそういう時に限ってろくな原稿にならないが、ラジオはガンガン物事を躊躇せずに判断し、言葉に載せていかなければならない。その分、下調べが必要だが、自ずとスピード感が出るし、主張する人のクセが出やすい。

そこがラジオの本質的な面白さだろうし、短時間でイッキに物事を人に伝えなければいけないため、頭を凄く使うし、緊張し、その分、上手く喋れた時の快楽ったらない。原稿を書いてる時よりよっぽどスッキリする。

しかもテレビと違い、ラジオは本当に縛りがない。時間もそうだが、指定がゆるゆるで、驚くほど出演者任せで、最初に出た時は焦った。こんなに好き放題できるのか? と。スケジュール的にもスタジオ出演なのに「本番30分前集合」だったりするから、渋滞で遅れたら一体どうなるんだろうと勝手に1時間前に行ってしまうほど。

でも違うのだ。正直よほどのコメンテーターでない限り、私が行かなくてもなんとか放送できてしまうというのが、本当のところ。

そう考えると、自動車専門誌は少々もったいない気がする。誰とは言わないが、自動車ジャーナリストや自動車ライターの中には「喋った方が面白い人」は結構いるのだ。直接言いづらいが、原稿を読ませて頂き、あれ? あの時聞いたトークの方が面白かったなぁ…と思うことは良くある。

その現象は喋りと原稿のキャラクターの違いにも影響しており、人は無意識のうちに自分自身にフィルターをかけるものなのである。しかも面白い事に、教育レベルが高い人ほどそうなる傾向がある。柔らかく言うと「配慮」であり、率直に言うと「カッコつけ」。

本当の自分は、あんなに下世話で毒々しい人間じゃない。もっと上質だ! と思いたいのか、率直な物言いを削る人がいる。最もそれはその人が長い人生の中で培った美学なのでイカンともしがたい。逆にそういう人には私の原稿などは「下品」と映っているだろうし、お互い様だろう。

しかし、純粋に自動車メディアを愛するものとしてはやっぱりもったいない。原稿には絶対出てこないあの人の味をなんとか生かせないものだろうか。

とはいえ意外とそういう人は、マイクの前に立つと人が変わる気がしなくもない。人前で喋ると変わる人っていうのは、案外いるものなのだ。私がラジオをやったら、もっと味を引き出せる自信はある。どなたかスポンサーにでもなっていただけないだろうか。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。
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